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掲載日:2025年11月20日
固形がんの薬物療法を担当します。一般的な抗がん剤以外にも、分子標的療法や免疫療法が開発され、通院での治療が一般的になってきています。日常生活のなかで薬物療法を行うためには、多彩な副作用への対策も必要であり、ご家族や多職種スタッフの力を借りることや、仕事や社会的な環境整備も重要になります。外科系の診療科で行う薬物療法を、内科的な視点でサポートできればと思います。
これまで当院では原発不明がんの診療は各科で行っていましたが、今後は腫瘍内科で一元化して治療を行ってまいります。原発不明がんの診療を円滑に進めるためには、各科との連携が欠かせません。迅速な検査・病理診断から、速やかな治療導入が可能となるように努めます。
原発不明がん(Cancer of Unknown Primary site)は、「十分な検索にもかかわらず原発巣が不明な組織学的に診断された転移性のがん」を指します。
頻度は全がんの約3%程度と言われており、諸外国と大きな違いはありません。
原発不明がんの病態生理は、①原発巣が成長の早期に転移したのちに退縮したもの、②一般的な原発臓器以外の発生母地が存在するもの、③転移が多すぎるために原発巣が埋もれてしまったものなどといわれています。亡くなられたあとで病理解剖を行い判明した原発巣の報告では、肺がん(20%)、膵臓がん(17%)、肝臓・胆道がん(6%)、腎がん(6%)などが多いとされますが、約30%は依然として原発不明です。
日本臨床腫瘍学会の「原発不明がん診療ガイドライン」によると、
● 1-2週の初期評価で原発巣が同定できない場合は早期にがん専門施設へ紹介する。
● 原発検索の期間は1か月程度とし、それでも原発巣が同定できない場合は「原発不明がん」として治療を開始する。
と記載されており、速やかな診断と治療の検討が必要です。
診断には、全身のCT撮影などによる腫瘍の広がりを調べる画像検査と、組織を採取し顕微鏡で観察を行う病理組織検査が欠かせません。原発不明がんは様々な性質をもつがんの集合体であり、最適な治療=「標準治療」はありません。できる限り性質が近い原発巣のがんの診療方針に倣って治療を行うことが望ましいとされています。2019年からは、遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)が、標準治療のない固形がん患者さんに保険適応を取得しており、遺伝子の性質を調べて原発巣を推定する試みも成果がでてきています。
当院では、これまで「原発不明がん」という診断でご紹介をいただいた患者さんを、月々の担当医が紹介状の情報を読み解いて担当科を決めて診療にあたっており、2025年4月までの2年間で111名の患者さんが紹介されました。ときには、追加の検査情報をお願いするなどして最適な診療科を決めていましたが、残念ながら診療を待つあいだに病状が進行してしまったり、遠方であるがゆえに通院できないと判断されキャンセルとなってしまったり、腫瘍マーカーのみの上昇でありがんの診断が確定されていないなどの理由で中止あるいはキャンセルとなってしまった方が20%ほどありました。
当院の原発不明がんの紹介の敷居を少しでも低くして、本当に診断・治療を急ぐ患者さんが困ることのないよう、腫瘍内科では相談の最初から関わっていければと考えています。また遠方という理由は、その後の治療に差し障ることから、主治医が近くにいる患者さんには「セカンドオピニオン」としての診療相談も積極的にお引き受けしたいと考えています 。

科長兼診療部長/平成18年岐阜大学卒
| 専門 | 腫瘍内科 |
|---|---|
| 資格 |
日本内科学会 内科認定医・総合内科専門医・若手委員会委員 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医・協議員 キャリアエンパワーメント委員会委員・SNS-ワーキンググループ委員 日本がんサポーティブケア学会 Onco-nephrologyワーキンググループ委員 日本泌尿器腫瘍学会 代議員 欧州臨床腫瘍学会 腎がんガイドライン委員 (Pan-Asian Guidelines Adaptation) |
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