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掲載日:2024年6月21日
泌尿器科では上腹部から下腹部、外陰部に至る広い範囲の癌を治療しています(図1)。埼玉県立がんセンターではより負担が少なく、体の機能を損なうことの少ない治療を提供するように努力を続けています。特に力を入れている4つの癌について簡単にご紹介します。
1)前立腺がん:
以前は早期発見が難しいがんの一つでしたが、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査が普及したことで根治できる段階で診断出来ることが多くなりました。もともと日本やアジア諸国では少ないとされていましたが、生活環境の欧米化、高齢化などの理由で患者さんの数は増加しており、がん統計では、男性での罹患数は第1位(2019年)、死亡者数は第7位(2020年)となっています(国立がん研究センター、最新がん統計)。
転移のない前立腺がんは手術ないし放射線治療により多くの場合根治が期待できます。当センターでは以前より、なるべく小さな傷で行う腹腔鏡下小切開手術を軸として、勃起機能や尿禁制の保持に力を入れた手術を行ってきましたが、2014年からはロボット支援手術を導入し、現在まで多くの患者さんに手術を行って来ました。合併症も少なく、手術結果も良好です。放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)を主体とし、密封小線源永久挿入治療(マイクロカプセルを前立腺に埋め込む放射線治療)でも実績をあげています。
中には初診時に既に転移してしまっている患者さんもおられますが、男性ホルモンの作用を抑えるホルモン治療薬や化学療法薬などにより、多くの場合で病状を改善させることが可能です。最近はより強力な薬物治療剤が複数開発されており、当センターでは、そうした新しい薬を積極的に使用することでなるべく長い期間安定した状況を保てるように努力しています。
2)膀胱がん:
がんの根が浅い場合は経尿道的内視鏡手術で切除することができますが、再発が多いため繰り返し入院が必要となる場合が少なくありません。埼玉県立がんセンターでは再発を繰り返す患者さんに治療剤を膀胱内に注入する方法でなるべく再発しないように工夫を加えています。
膀胱の筋肉の深さまたは筋肉を超えて進展したがんは、膀胱を摘出する手術が標準となりますが、手術前に抗癌剤治療を行い、根治の可能性を高めるように努力しています。当センターでは以前より、小さな傷で行う腹腔鏡下小切開手術によりなるべく負担の少ない治療を心がけてきましたが、2018年からはロボット支援手術を導入し、さらなる負担の軽減を実現しています。膀胱を摘出した後は、尿の出口をお腹に作る処置(回腸導管ないし尿管皮膚ろう)が必要となりますが、がんの条件によっては腸を使用して代用膀胱を作る手術(新膀胱)も可能です。膀胱を摘出することを望まない患者さんに対しては抗癌剤と放射線治療を同時に行う化学放射線治療も可能です。
3)腎臓がん:
健康診断での超音波検査の普及により小さな早期がんの段階で発見される方が増えています。大きさが4cm未満の場合は原則がんの部分だけを切除する腎部分切除手術が行われます。4cmを超えるがんの場合は腎臓全体を摘出する根治的腎摘除術が行われることが多いですが、条件によっては部分切除で対応できる場合もあります。埼玉県立がんセンターでは以前より、必要最小限の傷で行う腹腔鏡下小切開(ミニマム創)手術を行ってきましたが、2018年からロボット支援腎部分切除を開始、また腎臓全体の摘出が必要な場合も腹腔鏡下手術で対応する体制を整え、さらなる負担の軽減につとめています。転移がある腎臓がんは薬物療法が主体となります。分子標的治療薬や免疫治療薬によって長期の病状安定化が可能になってきています。
4)精巣がん:
精巣のしこりとして気づくことが多いですが、痛みなどの症状がほとんどないため受診が遅れてしまい、診断時には転移を起こしてしまっている場合も少なくありません。精巣がんは転移がある場合も、化学療法を軸とした治療によって多くの場合で根治を目指すことが可能です。埼玉県立がんセンターでは特に転移のある患者さんの治療に力を入れており、抗がん剤の効果をみながら、必要とあれば早めに治療法を変えていく方法で根治の可能性が高まるように努力しています。
1)低侵襲手術
ロボット支援手術や腹腔鏡下手術を中心に、負担の少ない低侵襲手術に取り組んでいます。ロボット支援手術ではダビンチサージカルシステムを使用し、より質の高い治療の提供を目指しています。
2)MRI-超音波フュージョン前立腺生検
MRIとリアルタイム超音波画像を連結し、画像ナビゲーションガイドによる前立腺生検を行っています。画像データを活用する前立腺生検はより正確な前立腺がん診断と最適な治療選択につながり、近年その重要性が高まっています。当科では最新型のフュージョン生検システムであるUroNav ver.4.0を使用しています。
3)前立腺部分治療(フォーカル・セラピィ)
前立腺がんの質や広がりの状態によっては、前立腺全体ではなく病気のある部位を選んで治療を行い、がん治療と機能温存の両立を目指すことも可能になってきました。埼玉県立がんセンターでは県内で先駆けて密封小線源永久挿入治療による前立腺部分治療(フォーカル・セラピィ)を開始しています。
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2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
|
ロボット支援手術 |
ロボット支援前立腺全摘術 |
57 |
71 |
94 |
97 |
87 |
95 |
84 |
85 |
ロボット支援膀胱全摘術 |
0 |
0 |
1 |
17 |
16 |
23 |
16 |
25 |
|
ロボット支援腎部分切除術 |
0 |
0 |
4 |
14 |
19 |
24 |
26 |
29 |
|
腹腔鏡下手術 |
腹腔鏡下根治的腎摘術 |
0 |
0 |
0 |
3 |
14 |
6 |
11 |
10 |
腹腔鏡下腎尿管全摘術 |
0 |
0 |
0 |
7 |
13 |
21 |
11 |
21 |
|
腹腔鏡下副腎摘除術 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
1 |
1 |
3 |
|
腹腔鏡下しょうせっかい |
小切開前立腺全摘除術 |
8 |
4 |
3 |
7 |
3 |
0 |
9 |
0 |
小切開膀胱全摘除術 |
18 |
12 |
13 |
9 |
17 |
9 |
14 |
1 |
|
小切開根治的腎摘術 |
26 |
19 |
20 |
8 |
12 |
1 |
1 |
1 |
|
小切開腎尿管全摘術 |
5 |
6 |
12 |
12 |
2 |
2 |
2 |
3 |
|
小切開腎部分切除術 |
10 |
8 |
19 |
5 |
1 |
1 |
4 |
2 |
|
小切開副腎摘除術 |
2 |
1 |
2 |
2 |
1 |
3 |
0 |
0 |
|
その他の手術 |
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt) |
132 |
136 |
159 |
164 |
149 |
176 |
195 |
207 |
|
前立腺癌小線源療法 |
8 |
17 |
9 |
10 |
7 |
6 |
8 |
8 |
精巣癌後腹膜リンパ節郭清 |
1 |
1 |
2 |
2 |
1 |
2 |
2 |
0 |
|
高位精巣摘除術 |
6 |
3 |
7 |
7 |
7 |
4 |
4 |
7 |
|
陰茎全摘除術・陰茎部分切除術 |
1 |
0 |
2 |
0 |
2 |
1 |
0 |
3 |
一般社団法人 National Clinical Database (NCD) の手術・治療情報データベース事業への参加について(PDF:203KB)
診療科目 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
泌尿器科 | 影山 幸雄 | 影山 幸雄 | 福井 直隆 | 影山 幸雄 | 影山 幸雄 初 |
佐野 裕大 再 | 井上 雅晴 | 松岡 陽 再 | 井上 直紀 再 | ||
松岡 陽 | 渕澤 寛崇 再 |
※医師名に「初」の記載があるものは「初診」のみ、「再」は「再診」のみ、記載がないものについては初・再診ともに行っています。
病院長/昭和60年 東京医科歯科大学卒
専門 |
泌尿器癌 |
---|---|
資格 |
日本泌尿器科学会専門医、指導医 がん治療認定医 臨床研修指導医 日本泌尿器内視鏡学会認定泌尿器ロボット支援手術プロクター ベストドクターズ社による「The Best Doctors in Japan」選出 Doctors of Doctors Network 優秀専門臨床医 |
科長兼診療部長/平成9年 東京医科歯科大学卒 東京医科歯科大学大学院修了
専門 |
泌尿器癌 |
---|---|
資格 |
日本泌尿器科学会専門医、指導医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 厚生労働省 臨床研修指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定 泌尿器ロボット支援手術プロクター 腹腔鏡下小切開手術 施設基準医、練達医 身体障害者福祉法指定医 難病指定医 共用試験医学系臨床実習前OSCE評価者 日本泌尿器科学会 学会賞 日本泌尿器科学会 総会賞 International Journal of Urology,Editorial Board Member 東京医科歯科大学医学部 臨床教授 |
医長/平成17年 東京医科歯科大学卒
専門 |
泌尿器腫瘍 |
---|---|
資格 |
日本泌尿器科学会専門医、指導医 腹腔鏡下小切開手術 施設基準医 日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医 日本泌尿器内視鏡学会認定泌尿器ロボット支援手術プロクター |
医員/平成29年 東京医科歯科大学卒
医員
医員
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