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掲載日:2024年12月27日
神経科のご紹介
神経科では主に神経、すなわち脳と、それにつながる筋肉の病気をもつこども達の診療しています。
次のような症状の方を対象としています
成人の神経(内)科では脳卒中、認知症、パーキンソン病などの不随意運動を主症状とする変性疾患を対象として診療しています。小児の専門病院である埼玉県立小児医療センターの神経(内)科では成人の神経科と異なり、てんかん、急性脳炎・脳症とそれらの後遺症、脳変性疾患、脳性麻痺、筋疾患、知的障がい、自閉症、広汎性発達障害などを総合的に診療しています。小児の神経疾患ではてんかん、脳性麻痺、知的障がいなどいくつかの疾患、症状が複数合併する事が多いので総合的に診察する必要があるのです。幸い小児病院は小児の専門の整形外科、リハビリテーション科、脳神経外科、耳鼻科、眼科があるのでそれぞれの専門的な処置にも対応できます。そこで、神経科ではけいれん性疾患、てんかんは神経科外来、運動・言語の発達遅滞、自閉症・広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害(ADHD)は発達外来(保健発達部)と2つの窓口に分けて予約診療しております。発達外来ではお座りができない、歩けない、言葉が出ないといった運動と言葉・知恵の遅れを主症状としたお子さんを対象として、保健発達部の田中医師、小一原医師とともに神経科医師が診療しております。神経科外来では脳波、頭部CT、MRI、脳血流検査などで神経疾患の病巣診断、病態診断を行い、適切な抗てんかん薬の決定、病状の評価、環境調整の方法に対する指導を行っています。てんかんを代表とする神経疾患の治療には時間がかかります。なかには現在の医学では治るということが望めない病気も少なくありません。そのため治療に対し患者である子どもさん本人、そしてお母さん、お父さん、さらに家族の方々の病気への理解、治療への積極的な参加が必要になります。神経科では、看護部と協力し『てんかん教室』という勉強会、保健発達部と協力しSH外来という重度心身障害児の集団外来などを開催、支援し、神経疾患への理解を深め子ども自身、保護者の治療への積極的参加に役立てています。
さらに、2018年からは、稀少疾患における他科との連携をより強化するために結節性硬化症(TSC)に関する診療連携組織として“TSCボード”を開設しました。年齢に応じ全身臓器の様々な病変が生じる結節性硬化症に対し、小児病院では各臓器別の診療体制のため、全身をくまなく診療することでは充分とは言えない状況が稀でないため、年齢と障害重症度に応じ、洩れなく診療できる体制を構築したいと考えております。しかし、結節性硬化症は成人期移行が必要なため、小児病院のみの診療完結は不可能です。結節性硬化症の診療は院内連携とともに地域連携が不可欠であり、先生方のご意見、連携へのご参加をお待ちしております。
その他、神経科の取組みとしては、原因不明の疾患、新たな検査方法や治療方法を確立するために、他の医療機関、大学と協力し様々な小児神経疾患の臨床研究を行っております。
埼玉県立小児医療センターは、紹介予約制です。
患者様の問題となっている症状に応じて神経科外来か保健発達部の発達外来の受診に分かれます。すなわち、
と2つの窓口に分けて予約診療しております。
神経科外来へのご紹介は電話048-601-0489におかけください。
発達外来へのご紹介は電話048-601-2165におかけください。
また、入院を要し緊急での対応が必要な患者様のご紹介は神経科医師、もしくは当直時間帯では当直医へ直接お電話下さい。
小児神経疾患の中で罹患率が高い疾患としては脳性麻痺、知的障がい、自閉症などを含む発達障害、そしててんかんなどの痙攣性疾患があげられます。埼玉県立小児医療センター2001年度の年報では神経科および保健発達部発達外来神経科担当初診患者1021名の内301名(29.5%)が痙攣性疾患で、痙攣性疾患の約半分がてんかんでした。このように小児神経疾患の中で占める割合の多いてんかんにおいて、West症候群は年齢依存性の臨床症候を示す小児期特有の難治性てんかんの代表です。埼玉県立小児医療センターが1983年4月1日に開設して以来、地域の諸先生よりこれまでに数多くの神経疾患患者様をご紹介いただいております。その中でWest症候群は開設以来20年の合計で200例以上にのぼり、この数字は他の施設より際だって多いものです。この小児期特有のてんかんであり、難治性てんかんの代表であるWest症候群を例に、当センターにおけるてんかんの治療成績をお示しします。
1983年4月1日より2002年12月31日までの間に、埼玉県立小児医療センター神経科を受診したWest症候群200例の診療記録よりその病因、頭部画像所見、治療に対する反応を調査し、当センター開設以来の20年間を第1期から第4期までの5年ごとの4期に分け病因、治療効果としての発作消失率の推移を検討しました。その結果、West症候群の病因は200例のうちの41例20.5%が潜因性でした。残りの159例は症候性で、細分類では出生前病因が45.0%、周産期病因が30.5%、出生後病因は4.0%でした。出生前要因の中では原因不明が最多で、ついで脳形成異常、染色体異常の順でした。病因の年代推移では年代が進むにつれて出生前病因の原因不明の比率が減少し、脳形成異常の比率が増加していました(図1)。さらに周産期病因を早産と正期産にわけてみると早産児のWest症候群が減少し、正期産児のWest症候群の比率が増加していました(図2)。初期治療の反応性をみると第1期では発作消失率は50.0%だったが、第4期では65.0%に改善しております(図3)。20年間の病因の推移から未熟児医療の進歩に伴う変化とMRIなど頭部画像診断技術を中心とする診断技術の向上に伴いWest症候群の病因診断が向上している事が明らかとなり、発作消失率が向上するなど治療成績も改善していました。
出典:浜野晋一郎、杉山延喜、望月美佳、田中学、南谷幹之、山下進太郎.West症候群200例の病因:20年間における推移.埼玉小児医療センター医学誌 2003;20 :52-60
小児神経領域において、適切な初期評価や治療を要する疾患の一つに急性脳炎・急性脳症(以下、急性脳炎脳症)があります。急性脳炎脳症は、ウイルスや細菌感染に伴い急性発症し、発熱や頭痛などの症状に加え、けいれんや遷延する意識障害などの中枢神経症状を呈し、その後遺症は重度あるいは死亡例まであります。本疾患は、有熱性けいれんの代表的疾患である熱性けいれんとの鑑別において大変重要な疾患であり、本邦における発症頻度は年間3.3人/10万人と言われています。
埼玉県立小児医療センターは1983年4月1日に開設して以来、これまでに地域の諸先生からご紹介頂きました急性脳炎脳症は250例以上にのぼります。小児専門病院である当センターにおける本疾患の病因や退院時の短期神経学的予後について、開設後30年間の推移をお示しします。
発症時期を第1期:1984年~1991年(8年間)、第2期:1992年~1998年(以下は7年間)、第3期:1999年~2005年、第4期:2006年~2012年の4群に分け、病因、発症時臨床症状、短期予後について診療録を後方視的に調査し、年代ごとの推移を検討しました。
対象症例は全体で246例(男児121例、女児125例)であり、発症時年齢は中央値2.7歳でした。各年代では、第1期35例(14.2%)、第2期32例(13.0%)でほぼ同数でしたが、第3期89例(36.2%)、第4期90例(36.6%)と第3期以降に症例数は約3倍に増加しました(図1)。なお、各年代で性差はありませんでした。
原因病原体は100例(41%)で同定され、その内訳は、突発性発疹(突発疹)の原因とされるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が最多(15%)で、次いでインフルエンザウイルス(8%)、単純ヘルペスウイルス(HSV)(6%)の順でした(図2)。原因病原体が同定できた100例について病原体別の各年代の推移を見ると、HHV-6とインフルエンザウイルスでは第3期以降に同定された症例数が多く、HSVは年代に関わらず同定され、respiratory syncytial(RS)ウイルスとロタウイルスは第4期になって同定されました(図3)。
発症時の臨床症状では、発熱とけいれんを認めた症例が各年代で80%を越えました(図4)。このうちてんかん重積状態(けいれん重積)を呈したのは、各年代において40-50%で変化なく推移しました。
急性脳炎脳症の退院時の神経学的予後では、運動障害と知的障害の頻度は約40%でありこの30年間で変化なく推移しました(図5)。てんかんの発症頻度と死亡率は、年代が進むにつれて減少し、第4期ではそれぞれ8.9%、3.3%まで減少し、多施設からの報告とほぼ同様の結果でした。
この30年間で、検査技術の向上に伴い原因病原体を同定できる割合が増えており、各病原体に対する治療も確立していますが、依然として神経学的後遺症は約4割に認められ、残念ながら年代の変化に伴う改善は認められませんでした。本疾患に対する標準的治療の確立と、後遺症を軽減できる新たな治療の開発が当センターに求められている責務と考えております。
出典:菊池健二郎、浜野晋一郎、松浦隆樹、鈴木ことこ、大場温子、田中学、南谷幹之.小児急性脳炎脳症246例の病因と短期予後について:30年間における推移.埼玉小児医療センター医学誌 2013;30 :43-49
名前 |
浜野 晋一郎 |
---|---|
役職 |
副病院長 兼 保健発達統括部長 |
専門(得意分野) |
小児神経 |
資格 |
日本小児神経学会理事、小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医 |
最終学歴(卒業年) |
東京慈恵会医科大学医学部(1984年(昭和59年)卒) |
名前 |
菊池 健二郎 |
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役職 |
科長 |
専門(得意分野) |
小児神経学、てんかん学 |
資格 |
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医、 |
最終学歴(卒業年) |
東京慈恵会医科大学医学部(2000年(平成12年)卒) |
名前 |
小一原 玲子 |
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役職 |
医長 |
専門(得意分野) |
小児神経 |
資格 |
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医 |
最終学歴(卒業年) |
自治医科大学(2003年(平成15年)卒) |
名前 |
松浦 隆樹 |
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役職 |
医長 |
専門(得意分野) |
小児神経 |
資格 |
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医 |
最終学歴(卒業年) |
東京慈恵会医科大学医学部(2005年(平成17年)卒) |
名前 |
平田 佑子 |
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役職 |
医長 |
専門(得意分野) |
小児神経学 |
資格 |
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医 |
最終学歴(卒業年) |
東京女子医科大学(2007年(平成19年)卒) |
名前 |
堀田 悠人 |
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役職 |
医員 |
専門(得意分野) |
小児神経学、てんかん学 |
資格 | 小児科専門医 |
最終学歴(卒業年) |
弘前大学(2017年(平成29年)卒) |
名前 |
大庭 梓 |
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役職 |
医員 |
専門(得意分野) |
小児神経学 |
資格 | 小児科専門医 |
最終学歴(卒業年) |
東京女子医科大学(2017年(平成29年)卒) |
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