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掲載日:2024年10月24日
全身に血液を送るために、心臓から出た血管は、上行大動脈—弓部大動脈—胸部大動脈—腹部大動脈となり腸骨動脈にわかれ下肢血管となります。
年齢、体質、食生活、家族歴、喫煙などで、動脈硬化がすすみ大動脈の一部がよわくなった部分があると、“瘤(コブ)”ができやすくなります。血管の壁が薄くなって大きく膨らんでくる病気が動脈瘤(どうみゃくりゅう)です。
動脈瘤は、ほとんどの場合無症状ですが、破裂すると激烈な胸痛や腰痛、大出血による意識障害などを起こし、突然死することもある恐ろしい病気です。一般的に大動脈の太さ(直径)が正常の1.5倍を超えた場合を大動脈瘤といいます。大きくなる風船のように壁が薄くなり、破裂しやすくなります。
胸部では5-6cm、腹部では4-5cm程度から破裂の可能性が高くなるため、年齢・全身状態などを含め、治療の相談と経過観察が必要となります。また、動脈瘤の形態が紡錘状のものより、嚢状の方が破裂しやすく、嚢状の形態はサイズが小さくても治療する必要があります。
胸部大動脈瘤とは、上行大動脈から弓部(遠位弓部)、胸部下行大動脈に動脈瘤があることです。胸部大動脈の正常の太さはおよそ3cmと言われていますので、4.5cmを超えて膨らんだ場合を胸部大動脈瘤と呼びます。5-6cmを超えてくると手術治療が検討されます。症状は、背部の違和感や嗄声(声のかれ)を起こすことも有りますが、破裂するまで無症状なことが多いです。
治療は、人工心肺を使用した人工血管置換術をおこないますが、当院では、積極的に低侵襲治療をおこなっております。低侵襲治療は、ステントグラフト内挿術に加え、他の施設ではあまりおこなわれない、頸動脈バイパスを加えステントグラフト術をおこなうハイブリッド手術や特殊な穴あきステントグラフトや枝付きステントグラフト術も患者さんの全身状態にあわせて行っております。
また、全国でも有数のステントグラフト治療施設であるため、ステントグラフト術後のエンドリークに対しても追加手術や追加カテーテル治療も積極的に行っております。
上行置換術
弓部人工血管置換術+オープンステントグラフト術
鼠径部に約3cmの傷のみで治療可能
●オペナーシング2016年春季増刊「心臓血管外科手術器械出し・外回り完全マニュアル(p.1169-173:墨執筆)より引用(無断転載禁止)
●オペナーシング2016年春季増刊「心臓血管外科手術器械出し・外回り完全マニュアル(p.1169-173:墨執筆)より引用(無断転載禁止)
右頸動脈-左頸動脈バイパス(デブランチ)+腕頭動脈 穴あきステントグラフト術
●オペナーシング2016年春季増刊「心臓血管外科手術器械出し・外回り完全マニュアル(p.1169-173:墨執筆)より引用(無断転載禁止)
重度肺気腫のため手術が困難な事例
胸腹部大動脈瘤とは、胸部から腹部にかけての動脈瘤です。この部分の血管も正常な血管の太さはおよそ3cmと言われています。5-6cmを超えてくると手術治療が検討されますが、胸部と腹部にわたる広い範囲の手術が必要であり、肝臓や小腸や膵臓や腎臓などを栄養する血管も動脈瘤に巻き込まれているため、手術侵襲が大きいです。症状は、破裂するまで無症状のことが多いです。治療は、人工心肺を使用した人工血管置換術をおこないますが、患者さんの状態、動脈瘤の形態などにより、低侵襲治療であるステントグラフト術や穴あきステントグラフト術あるいは、腹部内臓血管にバイパス術をおこないステントグラフト術をおこなうハイブリッド手術(腹部デブランチステントグラフト術)もおこなっております。この部位の動脈瘤は、他の部位の動脈瘤より手術侵襲が大きいため、患者さんの年齢、全身状態などで手術方法を決めています。
腹部デブランチステントグラフト術
●オペナーシング2016年春季増刊「心臓血管外科手術器械出し・外回り完全マニュアル(p.1169-173:墨執筆)より引用(無断転載禁止)
腹部大動脈瘤とは、一般的に腎動脈より足側にできる動脈瘤です。もちろん、たびたび腎動脈が巻き込まれた動脈瘤もみとめ、傍腎動脈型の腹部大動脈瘤と言われることも有ります。腹部大動脈の正常の太さはおよそ2cmと言われていますので、3cmを超えて膨らんだ場合を腹部大動脈瘤と呼びます。4-5cmを超えてくると手術治療が検討されます。症状は、破裂するまで無症状のことが多いですが、まれに腰痛・腹痛を訴える患者さんもいます。治療は、開腹し人工血管置換術が行われますが、積極的にステントグラフト内挿術もおこなっております。もちろん動脈瘤の形態や年齢などで人工血管をおすすめすることもあります。さらに、全国でも有数のステントグラフト治療施設であるため、ステントグラフト困難症例でも様々なテクニックを用いてステントグラフト術を行っております。また、ステントグラフト術後のエンドリークに対しても追加手術や追加カテーテル治療も積極的に行っております。
腹部大動脈は、ちょうどおへその部分で下肢への血管へと2つに分岐します。その分岐した骨盤部分にある血管を腸骨動脈といいます。さらに、下肢へとつながる外腸骨動脈とおしりの筋肉や生殖器・直腸を栄養する内腸骨動脈へと分岐します。この部分にも動脈瘤になることがあります。多くは、腹部大動脈瘤を合併しますが、この部分だけ動脈瘤となることもあります。正常の血管径は1cm程度であり、3-4cmを超えると手術治療が検討されます。症状は、破裂するまで無症状のことが多いです。治療は、開腹での人工血管置換術や低侵襲治療であるコイル塞栓術+ステントグラフト内挿術があります。動脈瘤の形態や患者さんの全身状態などにより治療法を選択しています。局所麻酔で行うこともあります。
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