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掲載日:2024年8月19日
近年の遺伝解析技術の目覚ましい進歩により、今まで原因不明であった多くの先天異常症候群の確定診断が行えるようになり、新たな知見や治療の進歩とともに原因診断の意義はますます増えてきています。
このような背景のもと、当センター遺伝検査室では、検査技術部所属かつ遺伝科との連携における遺伝診療部門として、当センター内で発生する遺伝学的検査の依頼、解析、結果報告、情報管理を含めた一元的な管理・統括部門としての役割を担っています(下図)。このことは3次医療を担う小児専門施設である当センターの重要な機能の1つです。
当検査室では、従来より施行されている染色体検査やFISH検査に加え、単一遺伝子疾患の原因遺伝子解析や、近年急速な技術の進歩を認める網羅的解析等、複数の遺伝学的検査に対応しております。当センター内の総解析数は年間約700件に上り、先天異常症候群を中心とした遺伝性疾患の原因診断を積極的に進めています。
また、必要に応じて外部機関との連携の中で診断や原因解明に向けての共同研究を進めており、細胞やDNAを長期保存するバンクとしての機能も果たしています。
1.染色体検査(G分染法/FISH法)→詳細ページへ
“染色体”は、細胞内に存在する遺伝情報の基本設計図であり、膨大な遺伝情報が23対46本の棒状の形態に分類されており、次世代に分配する役割も有しています。”染色体検査”は我が国で従来より行われている最もスタンダードな遺伝学的検査であり、既知の染色体異常症の診断に有用ですが、検出が困難な情報も多いことに留意する必要があります。
2.遺伝子検査(サンガー法/MLPA法)→詳細ページへ
“遺伝子”は染色体よりもさらに細かい設計図の単位です。主として様々な種類のタンパク質を指令し、全染色体上に約2万-2万5千種類程度存在することが分かっています。"遺伝子検査”とは“染色体検査”では判定できない遺伝子単位の変化でおこる先天異常症候群にターゲットを定めた検査です。主に次の2種類の解析方法を用いて調べています。
3.インプリンティング検査(MS-MLPA法)→詳細ページへ
遺伝子は父由来・母由来がペアで存在し、通常は両方とも働いているのですが、時に遺伝子の働きを決めるスイッチが父由来、母由来で異なることがあり、これらのスイッチのON/OFFが変化することにより起こる先天性疾患をインプリンティング疾患と呼びます。メチル化特異的MLPA法(MS-MLPA法)は、これらのスイッチのON/OFFを決めるメチル化状態を調べられるだけでなく、コピー数の有無も合わせて調べられる方法です。プラダ―・ウィリー症候群やアンジェルマン症候群などの代表的なインプリンティング疾患については、MS-MLPA法が極めて有用であり、確定診断に積極的に利用しています。
4.網羅的遺伝学的検査(マイクロアレイ/疾患エクソーム)→詳細ページへ
従来の染色体検査や遺伝子検査では、ゲノム網羅性と高解像度のうちどちらか一方しか満たすことはできませんでしたが、近年の解析技術の進歩によりこれらを両方兼ね備えた検査が登場し、原因不明といわれていた遺伝性疾患の診断に大きな貢献をしています。一方でこれらの網羅的解析に伴い産出される情報量は従来検査に比べて格段に増加するため、適切な病原性の解釈や予期せぬ偶発所見などには注意が必要です。当検査室においては、これらの留意点に適切に対応しつつ、従来の遺伝学的検査で対応が困難な例に対して下記の網羅的遺伝学的検査を積極的に利用しています。
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