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掲載日:2024年7月1日
脳神経外科のご紹介
脳神経外科では脳・頭蓋骨・脊髄の外科的治療が必要な病気を診療しています。
次のような症状の方を対象としています
具体的な治療対象となる小児での疾患は、水頭症、二分脊椎(嚢胞性・潜在性)、頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)、脳腫瘍、脊髄腫瘍、頭部外傷(頭蓋骨骨折、頭蓋内血腫、脳挫傷)、脳梗塞、もやもや病などです。
埼玉県立小児医療センター脳神経外科では水頭症、二分脊椎、狭頭症などの脳脊髄の先天性奇形、脳腫瘍、頭部外傷、もやもや病などの脳血管疾患などを総合的に診療しています。小児脳神経外科的疾患の診断にはCT、MRIなどの専門的な画像診断検査が必要であり、常に小児放射線科医と協力し、正確な診断が迅速に成されるように努めています。1年間に脳神経外科外来を受診される患者さんは延べ7000人で、約170人の方が入院治療を受けています。その45%は2歳以下の赤ちゃんで、術前術後の管理の難しい新生児・乳児の脳神経外科的疾患の患者さんが県内外より多数紹介されてきております。1年間の手術総数は約120人で、そのうちの40%が水頭症などの先天性奇形疾患、脳腫瘍、頭部外傷、脳血管疾患がそれぞれ20%を占めております。
特に当センターでの脳神経外科診療が他施設と大きく異なるところは、多数の小児医療の専門家医師が一人の患者治療に参加し、総合的チーム医療を行うことであり、新生児科医、遺伝科医、循環器科医、感染免疫科医、血液腫瘍科医、代謝内分泌科医、泌尿器科医、小児外科医、整形外科医、形成外科医などと適時チームを形成し、手術や術前術後管理にあたっていることです。
過去20年間に特に重点的に最新の治療を行ってきた対象疾患は、水頭症、二分脊椎(脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫)、狭頭症、脳腫瘍などです。
小児脳腫瘍
小児に発生する脳腫瘍には様々な腫瘍がありますが、悪性脳腫瘍中で髄芽腫、悪性神経膠腫、悪性胚細胞腫瘍については、手術や放射線治療後に治療成績向上を目指して、大量化学療法を施行しております。また、大量化学療法の施行は、化学療法の専門医である血液腫瘍科医師があたり、副作用の軽減に努めております。
術前
術後
大量化学療法後
先天性・後天性水頭症
水頭症の新しい外科的治療法として、神経内視鏡治療を数年前から導入しておりますが、以前水頭症の最も多い基本的外科的治療法は脳室―腹腔吻合術です。脳室―腹腔吻合術の手術経験数は現在までに700件以上となっており、この豊富な治療経験を十分に生かして常に手術後合併症の発生予防に努めております。特に新生児、乳児に対する脳室―腹腔吻合術後の感染症発生は数%以内と極めて低くなっております。このような多数例における治療経験が、私どもが患者さんの治療に提供できる最大のサービスであるとスタッフ一同自負し、日常診療に努力しております。
脳室―腹腔吻合術
神経内視鏡手術
二分脊椎(脊椎破裂)
嚢胞性および潜在性二分脊椎の手術件数は550件以上となっています。嚢胞性二分脊椎(脊髄髄膜瘤、髄膜瘤)の初期治療に際しては、脳神経外科に加えて新生児科、遺伝科、放射線科、循環器科、外科、形成外科の各科医師チームによる集学的診断を行い、患児の正確な機能予後を推定したのち、家族のインホームドコンセントを得て、治療にあたっております。このような医師チームによる急性期集学的診断を生後1-2日以内に行い、手術にのぞんでいるのは他施設では類をみません。もちろん、術後の管理にあたってもこれらの医師が一致協力しております。
潜在性二分脊椎の中で最も多いのが脊髄脂肪腫(脂肪脊髄髄膜瘤)です。当科における現在までの脊髄脂肪腫の手術経験数は約160例以上に上っており、100例以上の経験数を有する施設は本邦では数施設のみです。現在無症状の乳児例に対する手術時期は小児脳神経外科医のあいだでも議論のあるところであり、幼少児といえども脊髄脂肪腫の手術適応決定に際しては、かならず泌尿器科医による膀胱造影や膀胱内圧検査、整形外科医による下肢機能などの十分な検査を施行後に手術適応を決定しております。また、手術後も脳神経外科、泌尿器科、整形外科医により、長期間にわたり厳重な経過観察を行い、常に手術適応や手術方法の再検討を続けております。本年度からは厚生労働省の二分脊椎の総合医療に関する研究班の一員として、共同研究に協力する予定です。
脊髄髄膜瘤
髄膜瘤
脊髄脂肪腫
狭頭症(頭蓋骨縫合早期癒合症)
狭頭症には頭蓋骨縫合早期癒合症のみを認める孤立性頭蓋骨縫合早期癒合症と顔面骨などにも異常のある症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症(クルーゾン病、アペルト病など)とがあります。過去27年間で150例以上の狭頭症例に対して、脳外科医と形成外科医によるチームによる外科的治療を行ってきています。従来は本疾患に対しては、頭蓋顔面形成術を施行しておりましたが、数年前からは新しい手術方法として、頭蓋骨骨延長術を導入し、極めて治療成績が向上致しました。頭蓋骨骨延長術により、より大き頭蓋拡大度が得られるようになったとともに、術後の骨欠損などの術後合併症がなくなりました。
頭蓋骨骨延長術術前
頭蓋骨骨延長術後
脳神経外科の外来日は月曜日、水曜日、金曜日の午前中です。いずれの外来日でも初診を受け付けますので、紹介医からの診療状況提供書ならびに画像診断がすでに施行されている場合には、そのコピーを準備していただき、受診予約を電話にてお取りください。
尚、患者さんの病状が緊急を要する場合には、直接ご紹介医より脳神経外科医にお電話をいただければ、手術中でないかぎり、外来日以外や休日でも診察ないしは対応いたします。手術日は火曜日午後、木曜日午前・午後です。手術中の場合は、脳神経外科医師に代わり、外来看護師長が御用件を承ります。
セカンドオピニオンを希望される場合には、通常の外来日以外に診察・相談を設定致します。
セカンドオピニオンについて、詳しくは「セカンドオピニオン外来のご案内」のページをご覧ください。
手術術式 |
主な適応疾患 |
手術総数 |
---|---|---|
脳室-腹腔吻合術 |
先天性・後天性水頭症 |
961 |
脳室-心耳吻合術 |
上記が不可能な水頭症 |
10 |
硬膜下腔-腹腔吻合術 |
慢性硬膜下血腫、硬膜下水腫 |
166 |
嚢腫-腹腔吻合術 |
くも膜嚢胞 |
56 |
空洞-くも膜下腔吻合術 |
脊髄空洞症 |
5 |
脳腫瘍摘出術 |
各種脳腫瘍(神経膠腫、髄芽腫、胚細胞性腫瘍など) |
415 |
眼窩内腫瘍摘出術 |
眼窩内腫瘍(類上皮腫、炎症性腫瘍など) |
23 |
脊髄腫瘍摘出術 |
脊髄腫瘍(類上皮腫、神経線維腫など) |
59 |
頭皮・頭蓋骨腫瘍摘出術 |
頭蓋骨腫瘍(類上皮腫など) |
129 |
くも膜嚢腫開放術 |
くも膜嚢胞 |
94 |
頭蓋内腫瘤摘出術 |
2 |
|
頭蓋内血腫摘出・除去術
|
|
45 21 |
脳動静脈奇形摘出術 |
脳動静脈奇形 |
34 |
脳動脈瘤根治術 |
脳動脈瘤 |
3 |
EDAS/EMS |
もやもや病 |
184 |
脊椎破裂根治術 |
開放性脊髄髄膜瘤、髄膜瘤、潜在性二分脊椎 |
203 |
脊髄脂肪腫摘出術 |
脊髄脂肪腫、脂肪脊髄髄膜瘤 |
310 |
先天性皮膚洞摘出術 |
先天性皮膚洞、仙骨部皮膚陥凹 |
260 |
頭蓋破裂根治術 |
二分頭蓋(髄膜瘤、髄膜脳瘤) |
107 |
頭蓋形成術 |
外傷性骨欠損、2次性頭蓋骨欠損 |
150 |
頭蓋顔面形成術 |
狭頭症、クルーゾン病、アペルト病など |
257 |
頭蓋骨延長術 |
34 |
|
頭蓋開溝術 |
3 |
|
骨延長器抜去術 |
37 |
|
上位頚椎・後頭蓋窩減圧術 |
キアリ奇形、軟骨異栄養症、脊髄空洞症 |
49 |
膿瘍摘出・排膿ドレナージ術(開頭) |
2 |
|
膿瘍摘出・排膿ドレナージ術(開頭以外) |
4 |
|
皮下膿瘍摘出、皮弁形成術(頭部以外) |
8 |
|
開頭・排膿ドレナージ術 |
脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍 |
44 |
脳室リザーバー設置術 |
脳室内出血後水頭症(超未熟児) |
78 |
脳室リザーバー・マッカチムチューブ装着術 |
19 |
|
シャント抜去術 |
6 |
|
穿頭・脳室ドレナージ術、硬膜下ドレナージ術 |
脳室内出血、急性水頭症など |
123 |
穿頭・頭蓋内圧センサー装着術 |
頭部外傷、狭頭症など |
49 |
神経内視鏡手術 |
非交通性水頭症、くも膜嚢胞など |
142 |
選択的脊髄後根切断術 |
脳性麻痺(両下肢痙性麻痺) |
63 |
血管内手術 |
脳動静奇形、ガレン上静脈瘤など |
11 |
頭蓋内外直接血行再建術 |
1 |
|
ITBポンプ植込み術 |
0 |
|
その他(外減圧術ほか) |
3 |
|
合計 |
|
4,302 |
役職 | 名前 | 最終学歴(卒業年) | 資格 |
---|---|---|---|
科長兼部長 |
栗原 淳 |
日本大学医学部卒 (平成5年) |
日本脳神経外科学会専門医 |
医長 | 宇佐美 憲一 |
筑波大学医学群(平成14年) 東京大学大学院医学系研究科(平成25年) |
日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本小児神経外科学会認定医・評議員 日本てんかん学会専門医・指導医・評議員 迷走神経刺激装置植込資格 日本神経内視鏡学会技術認定医 日本脳神経外傷学会認定専門医 医学博士 |
近年、赤ちゃんの頭の形に関する相談が増加しています。このため、当センター脳神経外科では、「赤ちゃんの頭の形外来」を開設いたします。
「赤ちゃんの頭の形外来」開設のご案内(令和2年9月28日)(PDF:334KB)
科長兼副部長 栗原 淳まで電話または書面にてご連絡ください。
脳神経外科疾患の診断、治療には、前医(紹介医)での治療経過や画像診断の結果が不可欠です。受診される場合には前医の紹介状に加えて、必ず前医で施行された画像診断(CT、MRIなど)のフィルムのコピーを頂いてきてください。
これが不必要な検査の重複をさけるとともに、正確な診断・治療開始への早道となります。
セカンドオピニオンのための診察外来は、通常の外来時間以外に設定いたしますので、予約の際に「セカンドオピニオン希望」と申し出てください。
脳神経外科では毎週月曜日、水曜日の午後1時半より神経放射線カンファレンスを行っております。カンファレンスは院外医師も参加できますので、必要があれば御参加ください。但し、専門的なカンファレンスですので医師のみが参加できます。
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