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掲載日:2024年6月25日
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH:chronic thromboembolic pulmonary hypertension)は血栓が形成(多くは足の静脈で形成)されて、血流にのって肺の血管を詰まらせてしまい(塞栓)、これにより肺の循環が悪くなり、肺循環の圧が上昇してしまう(肺高血圧)病気です。
肺の血圧は、体血圧{通常(収縮期/拡張期) 120/60 mmHg 平均80 mmHg}のだいたい5分の1程度の圧で24/12 mmHg 平均15 mmHg程度ですが、肺の血管が6割以上障害されると上昇してきます。心エコーで推定できる肺動脈収縮期圧45mmHg以上になってくると、だいたい肺高血圧とみなされます。定義上は「平均の肺動脈圧25mmHg以上」が肺高血圧となります。平均の肺動脈圧を重要視する理由は、この圧が最も予後を規定し、圧が高ければ高いほど余命が短くなるためです。
慢性化した血栓は薬では溶かす事が出来ず、固くなり無くなることはありません。以前は有効な治療法がなく、国の定める「指定難病」の一つであり、上記病名で申請して認定されれば公費負担で医療が受けられます。
治療としては(1)薬物治療 (2)カテーテル治療(経カテーテル的肺動脈バルーン形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)) (3)開胸手術(当院では施行不可能で、手術可能な医療機関と連携をとり施行)が選択肢にあげられます。
近年、カテーテル治療の発展は目覚ましく、当院でも2014年9月より取り組んでいます。2019年までに選択的肺動脈造影125件、CTEPH48例(薬物治療例含む) 133 件のBPAを施行し、高い根治レベルを少ない治療回数(平均3.5 sessions (2~6 sessions)で得る事が出来ています。
治療前 |
治療後 |
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平均肺動脈圧 | 34.5mmHg(28~58mmHg) | 20.4mmHg |
収縮期肺動脈圧 | 61.1mmHg | 36.4mmHg |
HOT離脱率 | 70-80% | |
肺血管拡張薬離脱率 | 90%~ |
カテーテル治療後の肺障害は、軽度の血痰や、画像上の無症候の肺野陰影を含めれば60~70%あります。しかし、重度の合併症となることは稀となってきました。ただし、残念ながらカテーテル治療関連死も1例(2~3%)あり、リスクを伴う治療であることも事実です。
肺動脈圧72/19/平均37mmHg
動脈血液ガス分析PaO2 57.4mmHg
6分間歩行距離 160m, 最低SpO2 73%
肺動脈圧 29/12/平均19mmHg
動脈血液ガス分析PaO2 77.9mmHg
6分間歩行距離 440m, 最低SpO2 90%
このように、この疾患は治療により余命だけでなく、運動機能も著明に改善します。しかも、一度改善して抗凝固薬を適切に継続していれば再発なく、難病の位置づけながら「根治」を目指せる時代となりました。また、2019年1月より肺カテーテル治療の認定も取得し、埼玉県で唯一の認定施設となりました。その責務を全うすべく治療成績の向上に努めており、最善の治療法を選択して参ります。
お知らせ
◆日本循環器学会認定 経カテーテル的肺動脈バルーン形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)指導施設 2019/1月より
◆日本循環器学会認定 BPA指導医:藤井 真也 BPA実施医:永吉 信哉
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