ここから本文です。
掲載日:2024年6月18日
看護部は、精神科の24時間救急、依存症対策、児童思春期への対応、そして医療観察法病棟でのケア等、県立としての役割を果たすべく「チーム精神医療センター」の一員として、日々奮闘しています。
埼玉県立精神医療センターは、県立の精神科病院として24時間精神科の救急対応を行っています。また、児童思春期の精神疾患患者へは県内で唯一入院対応を行うとともに、医療観察法病棟を有し、民間では対応困難な精神疾患への対応を行っています。そのため、精神科看護においてもその専門性が高く求められ、看護部では精神科看護の質の向上に向けて習熟段階別に教育を行っています。 精神科看護では患者さんのこころと向き合うため、まずは患者さんと信頼関係を築くことが重要です。そのため、精神科看護の技術としてコミュニケーションスキルを磨き、患者さんとの信頼関係を築いて患者さんの社会復帰への支援を行います。しかし、急性期の状態にある患者さん等の対応では、時には患者さんの負の感情に対峙することがあり、自分自身の感情にも向きあわなければなりません。人の感情に向き合うやさしさと強さを身に着けることが大切です。 また、近年精神科医療においては、精神疾患患者さんへの虐待が問題となっています。埼玉県立精神医療センターでは職員一人ひとりが倫理観を醸成する取り組みを積極的に行い、精神疾患患者さんの人権を最大限に尊重する取り組みを行っています。 「チーム精神医療センター」をスローガンに、多職種で患者さんの人権を尊重した医療の提供に向け、専門性の高い看護が実践できる看護師の育成を支援しています。 副病院長兼看護部長 植木恵子 |
看護理念
患者の生命と人権を守り、患者の個別性を考えた自立支援を目指します。
社会の変化・ニーズに対応した安全で安心できる質の高い看護を提供します。
【ミッション】チーム精神医療センターとしての看護部組織の強化
【ビジョン】看護実践力の強化による改革推進
【スローガン】UNLESS(you) ACTION(is taken now)・・・
(あなたが 今 行動しない限り・・・何も変わらない)
〈令和6年度 看護部目標〉
専門性の高い精神科看護実践による改革推進~一人ひとりが持てる力を発揮してチーム医療を実践する~
看護部重点目標
1. 臨床実践能力の向上
2. 経営への具体的参画
3. 労務環境の整備促進
〈看護師の責務〉
精神医療センターの全ての看護師は、精神科領域の看護師として優しさと強靭さを合わせ持つ不断の努力を基盤とする実践力強化を目指すことを責務とする。
具体的には、(1)ひとりひとりが、唯一無二の存在として優れた看護実践者たるための自分自身を大切に育てる(自己への投資を惜しまない)こと。(2)difficulty-困りごと-、困難からの一歩の大切さを知り、辛さを伴う経験に意味を見出し、ダメージをマネージする能力(変化や困難に向き合い、乗り越え、適応する力)を獲得すること。これらを使命とし、ひとりひとりが、臨床現場でのリーダーであると自覚することである。
社会の変化は、精神に障がいのある方々の自立に向けて大きな影響を与えます。社会の変化を理解しながら患者の人権を尊重し、安全で安心できる質の高い精神看護が実践できる看護師の育成を目指しています。
センター看護部における継続教育は、キャリアを積み重ねる経験年数別・看護実践習熟度別研修、精神科領域における専門性を深める精神科看護専門研修、看護管理者及び次期看護管理者を対象とした看護管理研修、すべての看護職員を対象とした看護職員全体研修の4つの領域で構成されています。さらに各看護単位では患者の特殊性を考慮し、対象の理解と援助方法の実際を学ぶ目的で様々な研修を行っています。また、院外研修や学会への派遣、専門看護師及び認定看護師養成のための長期研修にも積極的に派遣しています。
1)令和6年度 精神医療センター教育研修体系(PDF:176KB)
センター看護部の新人教育は、2004年3月10日に提示された厚生労働省「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」報告書に基づき、新人看護職員がクリニカル・ラダーレベル1.に到達できるように計画されています。
新人看護職員の指導は、複数の先輩看護師が支援するプリセプター制度を取り入れています。また、平成18年度から新人看護職員一人ひとりの習熟度に合わせ指導できるように、卒後1年間を3つのステップに分け、院内研修・看護単位別学習・OJTを行っています。この段階的な指導計画は、夜勤開始など業務とも連動させ、新人看護職員が無理なく次の業務へ進めるように、新人看護職員・指導者双方で知識・技術の習得を確認するとともに、本人の意向も尊重して次の段階に進むことができるように計画されたものです。
当センターのメンタルサポート体制は、認定看護師によるケア(組織内専門家ケア)、看護部・師長・主任等によるケア(ラインケア)、同僚・プリセプターなどによるケア(ピアケア)、セルフケアの4つの段階からなっています。
中でも、新人看護職員に対するメンタルサポートを強化するために、新人担当者は、フォローアップ研修をはじめとするすべてのクリニカルラダーレベル1.研修を担当し、新人看護職員の気持ちの変化を迅速に察知し対応します。新人看護職員に留まらず、2年目看護師にも着目し、フォローアップ研修を実施しています。
令和5年度新規採用者オリエンテーション(PDF:537KB)
センターではクリニカルラダーを採用し、5つのレベルに分け研修等を企画し人材育成をしています。このクリニカルラダーは、地方独立行政法人埼玉県立病院機構の4病院で共通化されており、生涯成長できるような教育が考えられています。看護職員は、個々の看護実践能力に応じた研修を選択し受講しています。臨床経験のある新採用者看護職員についても、所属看護単位の看護師長と相談し、個々の研修計画を立て取り組んでいます。
【研修風景】
看護技術研修(採血) | 救急トレーニング |
センターには、二つの院内認定制度があります。一つは、安全な静脈注射を実施するための『静脈注射認定制度』で、クリニカルラダーレベル1.以上の全看護職員が認定を受けます。
二つ目は、精神科に特徴的な認定制度である『行動制限最小化に関する認定制度』です。
看護倫理等を含む行動制限最小化に関する幅広い知識、技術を認定する制度で、クリニカルラダーレベル3.(中堅看護師)以上の看護師が認定の対象となります。
精神科看護専門研修は、精神科看護の実践に必要な基礎的な理論やスキルについて学ぶ「精神科看護ベーシック研修」、認定看護師が企画・運営する精神科看護の専門性を深めるための「精神科看護アドバンスト」から成り立っています。さらに、各看護単位では患者の特殊性を考慮し、対象の理解と援助方法の実際を学ぶ目的で様々な研修を行っています。
CVPPP(*)研修は精神科医療における暴力に対して、専門的な知識・技術により包括的な対処を習得します。CVPPPトレーナー研修修了者が講師となって実施・活躍しています。
(*)CVPPP:ComprehensiveViolence Prevention&Protection Programme(包括的暴力防止プログラム)の略称。
専門性を持った3つの外来があります。地域の中で患者さんが障害を持ちながらも、その人らしく生活し続けることができるように援助しています。
高校生以上の方を対象とした外来です。治療の継続と地域での生活の支援を行っています。またアルコール依存症や薬物依存症の治療プログラムを毎週開催しています。
小・中学生を対象とした児童・思春期外来です。子どもたちの居場所作りのためのグループ活動を行うなど、受診しやすい環境を提供しています。
精神科救急医療における常時対応施設として主に緊急入院を対象に診療を行っています。
外来窓口は、相談の第一歩です。「困ったこと」「悩んでいること」などありましたら、お声をかけて下さい。
急性期の集中的な治療を要する精神疾患患者さんを対象に、電気けいれん療法を含めた積極的な治療を行う病棟です。その他、感染症を合併した患者さんも受け入れており、専用の病室も備えています。私たち看護師は、患者さんが安全で効果的な治療が受けられるように精神症状や身体症状に変化がないか、細心の注意をはらって看護を行っています。また、医師・精神保健福祉士・臨床心理士・作業療法士などとともにチーム医療を展開し、個別性を重視した看護を提供しています。レクリエーションや患者ミーティングでは、患者さん個々の能力が発揮できる機会として捉え、退院をめざしたプログラムの一つとして行っています。
第2病棟は、アルコール依存症や薬物依存症の患者さんを対象に、依存症についての理解と回復のための教育を行っています。私たち看護師は、患者さん自ら、断酒・断薬のための行動を起こすことができるように以下の働きかけを行っています。
ア 日常生活援助 規則的な生活の継続(睡眠・食事・排泄など) 金銭管理指導 イ 依存症の教育 教育プログラムの参加(情報提供) 生活の振り返り(提案・指導) 自助グループの導入(初回は看護師が同伴参加) ウ 退院に向けての援助 退院前訪問 家族面接 関係諸機関との連携 リハビリテーション施設への同伴外出 (通所の習慣化)
|
|
児童・思春期病棟として6歳から15歳までの精神疾患患者を対象に、主に薬物療法による医療的役割を担うため、平成18年4月に開設しました。患者さんは適応障害、統合失調症、強迫性障害、発達障害等の疾患が多く、精神疾患だけではなく様々な発達課題や養育問題を抱えています。第5病棟では「育てる看護」を目標に、他職種と連携し、個々の患者さんに合わせた援助を行っています。また、病棟と同じフロアには「けやき特別支援学校」が隣接しており、学校とも連携しながら子どもたちの学習支援を行っています。そして、こどもたちが育つための家庭や学校・地域社会など、生活環境の調整や教育問題などについて関係機関や関係職種と連携し、地域支援に取り組んでいます。
主に緊急に治療を要する精神病状態の患者さんが入院しています。病室は全て個室となっており、患者さんにとって充実した設備と快適な療養環境が整備されています。私たち看護師は、患者さんの人権と安全に配慮し、一人ひとりの回復過程にあわせた日常生活行動の自立への援助を中心に、早期退院(3ヶ月以内)を目標に関係職種と連携した看護を実践しています。
「医療観察法」の正式名称は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。
第7病棟は医療観察法に基づいて運営され、社会復帰を促進することを目的とし、おおむね18か月以内での退院を目指し、入院対象者の各期別のケアと評価は、多職種チームにより実施されます。
看護師は、安全と治療のバランスを図りつつ、「精神障害をもつ他害行為者も、治療とケアを受ける権利をもつ」という理念に基づき専門的サービスを提供しています。個々の他害行為に関わらず、各入院対象者のニーズに基づいたケアを提供しています。
精神医療センターでは、7名の精神科認定看護師(CN)が活躍しています。配置となっている各看護単位での活動や組織横断的な活動を通して、スタッフの育成や看護の質向上をめざしています。
〈領域と在籍人数〉 | |
認定看護師(日本精神科看護協会) | 精神科認定看護師 7名 |
2024年4月現在
✿この病院を選んだ理由を教えてください。
いくつかの病院のインターンシップに参加したところ、当センターの雰囲気が一番よかったからです。さらに、精神領域の看護実習に行ったこともセンターを選んだ理由です。実際に働いていて、家族や友人の相談を受けることもあり、仕事が役に立っていると思います。
✿勤務している病棟はどんなところですか。
急性期病棟です。統合失調症や、うつ病、躁うつ病、認知症、発達障害、摂食障害、依存症などの精神疾患に加えて、循環器、呼吸器、代謝系、内分泌系などの身体合併症を併発し処置が必要な方が多く入院しています。精神科では、身体的な処置が少ないと思われがちですが、たくさんの看護技術を学ぶことができます。
精神科というと暴力リスクがあると思われがちですが、CVPPPという包括的暴力防止プログラムというものがあり。暴力の予防及び安全に対応できるスキルなども身につける事ができます。
✿精神看護の特徴は何ですか。
「患者参画型看護計画」という患者さんの希望を取り入れた上で看護計画を作っていくという方法を積極的に行っています。ストレングスマッピングシートというコミュニケーションツールを利用しながら、患者さんの問題点ではなく強みに着目し、それを生かせるような関わりも行っています。看護師として働いていると、どうしても患者さんの問題点に注目しがちですが、精神科では患者さんの良いところを見つけ褒めて伸ばしていくことが、患者さんとの信頼関係を構築する上で効果的と考えます。
一般科の入院よりも長い入院起案なので、一人一人とじっくり関われ、その人の人生がより良いものになる手助けをすることができると思います。
✿どんな時にやりがいを感じますか。
退院前の患者さんの自宅に家庭訪問を行い、地域生活に戻るうえでの課題などをは把握することもあります。そのような関わりを経て、最終的に受け持ち患者さんが退院する時の笑顔を見たり、ご本人や家族の方に感謝されると嬉しく思い、やりがいを感じます。
✿勤務している病棟はどんなところですか。
依存症病棟です。依存物質はアルコール、覚せい剤、処方薬が主です。
依存症は、誰でもなりうる病気です。症状としては、お腹が空いてずっと食べ物のことを考えている状態と考えていただければわかりやすいと思います。
✿どんな時にやりがいを感じますか。
1年目の後半から担当患者(プライマリー患者)を受け持ちます。私が初めて担当した患者さんは入院時「うつ状態」といっても良い状況でしたが、今では復職して元気に外来に通っています。その姿に、今では私のほうが元気をもらっています。
私は、学生の時から「人が人を治す看護」にとても興味がありました。精神看護のやりがいはそこにあると思います。
✿学生時代と変わったことは何ですか。
勉強が楽しくなったと思います。勉強が直接患者さんのためになるのでやりがいがあります。学生時代から勉強が患者さんのためになるという意識をもっと持つことができればよかったなと思います。勉強頑張ってください!
✿この病院を選んだ理由を教えてください。
私はもともと患者さんとのコミュニケーションが苦手でした。しかし、精神科実習の中で指導者さんと共に、患者さんとの関わりを振り返り、これまで弱点と感じていたことが強みに変わったり、気付けていなかった自分を発見することができました。これらが自信に繋がったことはもちろん、私もこんな看護がしたいと強く思い、精神科を希望しました。
✿勤務している病棟はどんなところですか。
児童思春期病棟は、小・中学生を対象とした病棟です。病棟には特別支援学校が併設されており、入院しながら学校に通うことができます。入院患者さんの主な疾患は発達障害、適応障害などです。児童思春期病棟では「育てる看護」を目標に、個々に合わせた対応を他職種と連携しながら取り組んでいます。
看護師は患者と一緒に入院中の目標を考え、定期的な振り返りを行いながら、患者さんが主体的に取組めるような支援をしていきます。また、病棟での生活だけでなく、退院後の生活を考えながら支援しています。
✿精神科看護の魅力は何ですか。
子供たちのパワーに圧倒されながら毎日を過ごしています。精神科では医療スタッフの関わりが患者さんの症状に与える影響が大きいため、日々の関わりが重要になります。そのため、『あの関わりで良かったのか』『もっとこうすれば良かった』と自身の関わりを振り返ることも多いです。しかし、患者さんとじっくり向き合い、一緒に悩んだり笑ったりしながら、患者さんだけでなく自分自身も成長することができるのは精神科看護の魅力であると感じています。
✿この病院を選んだ理由を教えてください。
当センターの救急病棟に実習に来たことがきかっけでした。精神科の実習はコミュニケーションをとることがメインということもあり、精神科に対しポジティブな印象を持ちました。また、その時の実習担当の看護師さんが柔らかい雰囲気で話しやすく、指導内容も筋道がしっかりしていて、こんな看護師になりたいと強く憧れ、最終的には一緒に働いてみたいと思うようになりました。
✿勤務している病棟はどんなところですか。
医療観察法病棟で、名前の通り医療観察法に基づいて運営されます。主な病棟の特徴は、多職種チーム連携と多彩なプログラムを行っていること等が挙げられます。
✿どんな時にやりがいを感じますか。
看護の文献でもよく書かれれいるように、看護師は患者の一番近くにいるスタッフです。そのため、患者との距離も近くなりやすく、感情が揺さぶられる機会も多く、精神面で消耗することが度々あります。その分、患者が以前よりよくなったとき、目標を達成できた時の喜びも大きいです。
看護就労体験を通じて職場選びの参考にしていただくために、毎年インターンシップを実施しています。(平日、いつでも実施。実施期間は1日~3日以内。)
ご案内を「センターからのお知らせ」に随時掲載しますのでご覧ください。
受付:048-723-1111 総務人事担当・看護部まで
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください