埼玉県立 小児医療センター > 各部門の紹介 > 保健発達部門 > 夜尿・遺尿外来 > 夜尿・遺尿外来(Q&A)
ここから本文です。
掲載日:2024年2月13日
夜尿症のお子さんはどちらかというと消極的で、引っ込み思案の傾向がありますが、それは夜尿をしていると言う潜在的な負い目の結果であり、夜尿が自立すれば積極的になります。本人の性格が夜尿の原因になることはありません。
夜尿をしていると本人がだらしないから、自覚が足りないからと考えがちですが、寝ている間の出来事はそのような精神論では解決しません。
夜尿の原因を親の育児方法、トイレットトレーニングに結びつけることがありますが、本当でしょうか、同じような育児方法、トイレットトレーニングを行っていて夜尿が早く自立しているお子さんは沢山います。原因がはっきりしないからと言ってこのような問題が原因と決めつけることは本人、親の自信を喪失させる、負い目を強くするだけで何の利点もありません。夜尿の本態は遺伝によるものであることを認識して、自信をもって子育てを行っていきましょう。
ごく一般的なストレスは決して夜尿をもたらすものではありません。参考までにお話しますと、阪神大震災をきっかけに夜尿の出現をみたお子さんは500人の小学生のうち1人だけでした。この1人も小学校入学時まで夜尿が見られていたお子さんです。2次性夜尿症では時に心因的要因が発症のきっかけになっているものもありますが、心因的要因としては明らかな虐待、恐怖体験など誰がみてもストレスと思われる場合で、多くは夜尿以外の身体症状を伴っております。
夜尿なり昼間遺尿だけで発育が正常で、今までに膀胱炎の既往がなければ大部分は病気ではありません。ただし就学前でも夜尿、昼間遺尿が間断なくみられるとき、お尻の皮膚が出っ張っていたり、窪んでいるとき、いびきが強いときあるいは小学校高学年になっても昼間遺尿が続くとき、便秘が強いときには精密検査を受けることをおすすめします。
夜尿症のお子さんの知的発達は夜尿のないお子さんと比較して、全く差は見られません。ただし夜尿があるための潜在的な引け目から、物事への積極性に欠ける面があり、社会生活上マイナス評価になっているようです。早めに夜尿から自立し、本来もっている能力をフルに発揮できるようにしてあげることが大人の責任だと思います。
夜尿症のお子さんは身体発育が全体的にのんびりしている場合が多いようです。身長も低めで2次性徴の出現も遅れ気味ですがいずれも正常範囲のものです。中学生以後はその遅れを取り返しており、最終的には平均的な成人になります。いわゆるスロースターターといわれるもので気長に見てあげることが必要です。
身長が同年齢のお子さんより明らかに小さいときには内分泌や腎臓の病気があることがあります。早めに小児科の先生にご相談ください。
夜尿で目覚める、目覚めないは古くから論争の的になっております。大人を基準に考えるとどうして尿意で目覚めないと考えがちですが、子どもと大人の違いに眠りの深さがあります。子どもは多少の刺激ぐらいでは目覚めない深い眠りの中で、成長、発育しています。夜尿をしている子どもの眠りが特に深いあるいは深い眠りの時に夜尿をしていると言う事実はありません。逆に尿意程度で目覚める浅い眠りは子どもにとって決して生理的ではありません。朝まで尿をしないで過ごせるようにすることが子どもにとって一番幸せなことです。
子どもが昼間にパンツを汚しているのは決して我慢しすぎたためでもなく、力んだためでもありません。膀胱が尿をしっかり貯められないことが原因で、本人が自覚できない状態で知らないうちに尿が漏れてしまうものです。目先の汚れに惑わされて早めに排尿させているといつまでも膀胱が尿をためる力が尽きません。一時的に尿漏れが増えてもなるべく排尿を我慢させることが尿漏れをなくす早道です。
便秘があるとどうしても膀胱の貯める量は少なくなります。
1日1回排便する習慣をつけましょう。便秘が1週間以上続くあるいは便の漏れがある場合には脊髄に病気があることがあります。早めに小児科の先生に相談してください。
夜尿症は寒くなるとひどくなります。寒さは膀胱容量を低下させ、尿量も増加させるためです。夏の間は殆どみられず、治ったと思っていたところ寒くなってぶり返すこともしばしば見られます。夜尿が完全に治ったと考えるには一冬経過見る必要があります。
一般の人がたまにパンツを汚せば不快感を感じますが、夜尿にしろ昼間遺尿にしろ毎日している本人にとってパンツが汚れていることは日常的なことです。日常的なことでは本人は不快感を感じないのは当たり前のことです。髪の毛の長い人が髪の毛が気にならない、いつも鼻水をたらしている人は鼻水が気にならないことと同じです。
起こして排尿させていると、発育が悪くなったり、夜尿の自立が遅れる結果になります。起こさないでぐっすり眠らせてあげましょう。夜尿に気づいたらパンツなりオムツを起こさないようにして取り替えてあげ気持ちよく睡眠がとれるようにしてあげてください。
本人がいやがればやめてください。本人が良ければ続けてかまいません。オムツを続けていたからと言って夜尿がとれにくくなることはありません。
3から4歳を過ぎると約80%の子どもたちは夜尿がみられなくなります。この時期の夜尿の自立は個人差が大きく、小学校入学以後でも夜尿がみられる子どもは約10%程度みられ、一般的には小学校入学以後にも夜尿がみられているものを「夜尿症」と言っております。小学校入学時に夜尿が持続している子どものその後の自然経過をみますと、1年過ぎるごとに約10から15%程度ずつ自立して行き、中学校入学時にも夜尿のみられる子どもは全体の1から5%前後となります。
いつ頃治るかは現在の夜尿の時間帯も参考になります。朝方の夜尿であれば1から2年後には自立するでしょう。寝入りばなの夜尿があれば5から6年かかる可能性があります。また昼間遺尿がある場合には腰を据えて待つ必要があります。昼間遺尿がある時には自立に時間がかかります。
夜、排尿しなければならない状態が大人まで持続することはまれではありません。しかし大部分の大人では目覚めてトイレに行くようになりますが、一部の人は覚醒できないで大人の夜尿症に移行していくものがあります。同年代の成人の0.1%前後には夜尿がみられていると言われ、成人まで持続する夜尿は女性に多いようです。
排尿を我慢していけないのは現在膀胱炎がある場合、膀胱に異常がある場合、すでに体重(キログラム)の10倍以上貯めている場合などです。膀胱の貯めの悪い場合にいくら我慢しても具合がわるくなることはありません。
体にはどうしても必要な1日の水分量があります(おおよそ20から30ml/kg、食べ物の水分も含めて)。何かの原因でそれだけの水分量がとれなくなると脱水症になります。反対にそれ以上の水分は総て尿になります。水分摂取量が多くなれば必ず尿量が増えてどうしても夜尿の程度はひどくなります。
尿は体の老廃物あるいは余分な塩分を排泄するためにしています。余分な塩分が少なければそれだけ尿は少なくてすみ、のどの渇きが少なく水分を必要としません。試しに塩分の量を現在の半分にしてみてください。自然のままで摂取する水分量、尿量が明らかに減るのが実感できると思います。体に必要な塩分は1日1グラム程度で、普段はこの10倍程度の塩分を摂っており、制限しすぎることはありません。
尿は一定量膀胱に貯まってから排尿されます。昼間目一杯貯められる量が睡眠中に貯められる量となります。尿量が多くても膀胱がいくらでも貯められれば夜尿はおきませんが、自ずと限界があります。一応の目安としては体重(キログラム)の7倍です。それ以下であればなるべく排尿を我慢して貯めを増やすようにしましょう。
尿の色(濃さ)は老廃物、塩分の濃度により変化します。1日に排泄される老廃物、塩分が一定であれば(食べる量が一定であれば)、水分の量(=摂取した水分量)により尿の色(濃さ)は変化します。起床時の尿は夜寝ている間(8から9時間)に水分を摂取することをしませんから1日のなかで一番濃い尿であるのが一般です。ある時間に水分を摂取し、その後一定の時間に尿をしていくとだんだん尿は濃くなりますから、夜尿をしている場合の夜尿の尿と起床時の尿を比較するとその間に水分摂取をしていませんから起床時の尿はより濃くなっています。そのような状態であるにもかかわらず起床時尿がうすい場合には前日の水分摂取のコントロールが不十分と考えざるをえません。
集団生活での宿泊では夜尿をおきにくくする条件がいくつか重なります。夜尿の頻度が3分の1以下のものであれば、一般的な注意のみ(寝る前の排尿、夕食後の飲水量の制限)で宿泊で失敗することはありません。ただし、寒いところへ行く場合、夜尿頻度が多い場合には普段の夜尿する時間帯を把握し、付き添いの大人に時間を決めて覚醒排尿するようにお願いしてください。お子さんによっては付き添いの大人に知られることをいやがり、一晩中寝ないで頑張るお子さんもいるようですが、何日もは無理ですし、昼間、睡眠不足で事故の原因にもなりかねません。本人と十分話し合い、大人にお願いして心配ないことを納得させてください。
病気の可能性がない夜尿症では小学校入学後で十分です。
夜尿症は大きく3つの病型があります。その病型により治療法は異なります。本人の病型を診断して、本人に必要な生活指導、治療が必要となります。他人の経過は参考にはなりますが、絶対的なものではありません。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください