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掲載日:2026年4月10日
令和8年4月に埼玉県立がんセンターの病院長に就任いたしました別府武と申します。
埼玉県立がんセンターは、埼玉県100年記念事業の一環として1975年11月、研究所を併設する100床の病院として発足しました。その後の数度にわたる増床を経て、2013年12月新築移転し現在503床となり、2021年4月には地方独立行政法人埼玉県立病院機構の一病院として新たなスタートを切りました。そして昨年、創立50周年を迎え、より一層患者さんに高質で安全な医療を提供すべく新たなステージへ入りました。
当院にはいくつか特徴がございます。当院はがん専門病院です。国から指定を受けた「都道府県がん診療連携拠点病院」として埼玉県のがん診療をリードするとともに、地域の医療機関と連携して埼玉県全体のがん診療の質の向上に努めております。しかしながら、がんと診断がついていない患者さんや良性腫瘍の患者さんでももちろんいらしていただいて構いません。職員が真摯に対応させていただきます。また、セカンドオピニオンももちろんお受けしております。がんの専門医がきちんと的確にお答えできる準備をしております。
その他の当センターの特徴と取り組みについて御紹介いたします。
がんの診断にあたっては、PET-CTや全身CT、MRIをはじめ、各種の画像検査を院内で受けることができるように整備しております。血液検査、尿検査、生理検査、細菌検査などを担う臨床検査部門はISO15198の認証を取得し、質の高い検査業務を行っております。がん診療に不可欠な病理診断においても、スタッフの充実をはかり、診断までの時間は以前より大幅に短縮されています。内視鏡分野では内視鏡診断と早期がんでの内視鏡治療を他科との連携もスムーズに積極的に行っており、患者さんが安心して検査、治療を受けられるようになっております。
次に治療に関してですが、外科的がん治療の中心となる手術では最新の技術、機器を積極的に取り入れ県民の皆様のニーズに答えるように体制を整えております。なにより外科医はその道のスペシャリストを指導医において外科系医師みんなが積極的に取り組んでいます。腹腔鏡・胸腔鏡を利用した低侵襲手術に加えて2014年からは内視鏡手術支援ロボットである「ダ・ヴィンチ」を導入し実績をあげております。増え続ける患者さんに対応するため2020年から「ダ・ヴィンチ」2台の体制とし、一人でも多くの患者さんが負担の少ない手術を受けられるように努めております。また、多科でチームを組んで行うような超難解手術は患者さんへの負担は一般に大きくなりますが、当院では多科、多職種で構成されるキャンサーボードで十分検討したのちにチームワークよく実施する、以前より得意とするところでもあります。どうぞためらうことなくいらしていただければと思っています。
放射線治療ではがん病巣にきちんと治療線量をあて、その他の正常組織になるべく放射線を当てないように計画した強度変調放射線治療(IMRT)を基本とし、少ない副作用で高い効果を得られるように努力しております。当院の放射線治療は、頭頸部癌、肺癌、食道癌、脳定位、乳癌、緩和治療、再照射、皮膚癌などに対しても数多くの経験から自信をもってIMRT治療を行っております。また呼吸性移動など、体内の動きに対応した動体追尾照射なども取り入れ効率的に精度の高い放射線を照射する方法をとっております。一方、この春からRI治療を行う組織としてセラノスティクスセンターをオープンしました。RI内用療法(放射性同位元素を医薬品として経口または静脈内投与する治療)はもちろん前立腺の小線源治療だけでなく子宮腔内照射も行っております。また、この4月からは前立腺がん細胞膜抗原(PSMA)に対するRI治療も開始できるように準備しました。
がん薬物療法においては従来の抗癌剤治療に加え、新規分子標的薬、免疫治療薬の開発が急速な進歩を遂げております。当センターでは最新の薬剤を積極的に取り入れ、がんの状況に合わせたきめ細かい治療を行っています。また新規薬剤の導入に向けた臨床試験・治験にも精力的に取り組んでおります。なお通院でのがん薬物療法を担う通院治療センターは国内でも有数の規模を誇り、多くの患者さんに適切な通院薬物療法を提供するための体制を整えています。
近年、がんの発症には遺伝子異常が深く関係していることが明らかになっております。患者さんごとにがんに関連する遺伝子の状況を調べ、有効な薬物療法がないかどうか検討するがんゲノム医療が行われる世の中になりました。当センターはがんゲノム医療センターを設置し、遺伝子の情報に基づいた診療を進めてきましたが、2019年9月には全国34か所のゲノム医療拠点病院の指定を受け、周辺医療機関と連携して埼玉県のゲノム医療の推進に努めております。これに関連し、併設する臨床腫瘍研究所では発がん機構の解明から、がんの予防・治療につながる研究を行っています。
また、がん病巣の組織を形態学的なアプローチから診断していく病理学においても、近年分子レベル・タンパクレベルでの評価を行うことで、より正確で深い診断や予後予測に寄与できる指標(バイオマーカー)診断の重要性が増していることから分子病理・デジタル病理診断などの研究も進めています。
一方、がん患者様は常に肉体的にも精神的にも苦痛を感じることが多くなります。がんに伴う不快な症状を緩和するための緩和医療にも当院は古くから力を入れており、診療早期の段階から積極的に導入し、闘病中の皆様ができるかぎり快適にその人らしく過ごせるように支援しております。緩和病棟は県内でも有数の規模を誇り、質の高い緩和医療を多くの皆様に提供できるように精進しております。
最後に患者さん一人一人のがん診療を円滑に進めるため予定入院患者さんを対象とした入院支援を患者サポートセンターの業務の一つとして実施しています。患者サポートセンターでは医師、看護師のみならず薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどが積極的に関与し、患者さんのがん治療の全過程を入院から退院まで継ぎ目なく支援する体制を整えております。また、様々な悩みや相談に対応する窓口として国の認定を受けたがん相談支援センターの職員が患者さんのみならず一般の人からも無料で相談を受ける体制を整えています。
このような機能を駆使しながら当院でなければできない高質ながん治療を目指して職員一同日々精進を重ねております。一人でも多くの患者さんに当院の医療が提供できることを願っております。
埼玉県立がんセンター病院長
別府 武
“唯惜命~ただ命を惜しむ~”
私達は生命の尊厳と倫理を重んじ、先進の医療と博愛・奉仕の精神によって、がんで苦しむことのない世界をめざします。
埼玉県立がんセンターは、次の基本方針のもとに、「先進的ながん医療を実践する進化する病院」・「日本一患者と家族にやさしい病院」をめざします。
当院は病院の理念として掲げる"唯惜命~ただ命を惜しむ"を実現することを目的とし、基本的人権と患者さん権利、および医療倫理の原則指針に基づき、「臨床倫理に関する指針」を定めています。
埼玉県立がんセンターでは「唯惜命」の理念に基づき、患者さんの権利を尊重した医療の提供に努めております。
患者の皆様には、これらの権利を適切に行使して、私たち医療従事者と共に力をあわせ、治療に参画されることを期待します。
埼玉県立がんセンターでは、「児童の権利に関する条約(1989 年 11 月 20 日に第 44 回国連総会において採択され、我が国は、 1990 年 9 月 21 日にこの条約に署名し、1994 年 4 月 22 日に批准 、 1994 年5 月 22 日に効力が生 じている)」の下記の条文に基づいて、子供たち(児童)の権利(生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利)を尊重する。児童とは十八歳未満のすべての者を言う。
1. 生命に対する児童の固有の権利を認めるものとし、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。(第六条)
2. 児童がその父母の 意思に反してその父母から分離されないことを確保し、また、父母の一方又は双方から分離されている児童が父母 との接触を維持する権利を尊重する。(第九条)
3. 児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保する。児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に 考慮される。(第十二条)
4. 児童は、表現の自由についての権利を有する(第十三条)
5. 精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で 十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める(第二十三条)。
6. 到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられることについての 児童の権利を認める(第二十四条)。
7. 養護、保護又は治療を目的として収容された児童に対する処遇等に関する定期的な審査が行われることについての 児童の権利を認める(第二十五条)。
8. すべての児童が社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとし、このための必要な措置をとる(第二十六条)。
9. 相当な生活水準についての児童の権利を認める(第二十七条)。
当センターでは、だれもが快適で有効な診療を受けていただけるよう、次の事項を患者さんとそのご家族の方々の責務としてお願いしております。
新しい薬の臨床治験や新しい治療法の開発のための臨床試験、患者サービス向上のためのアンケート調査などにご理解・ご参加をお願いすることがあります。
すべて臨床試験審査委員会、倫理審査委員会での審議を経て承認されたものです。ご同意が頂けた場合のみ手続きを行います。
がん医療の発展のためにご協力をお願いします。
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