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埼玉県立がんセンター > 診察関連部門・診察科のご案内 > 診療科のご案内 > 整形外科 > 整形外科(がん運動器診療・がんロコモ対策について)

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掲載日:2021年9月7日

 

 がん運動器診療について

 

埼玉県立がんセンター リハビリテーション室長 小柳広高

小柳Dr整形

 

 

 

 

 

 日本は世界でもっとも早く超高齢化社会を迎えると同時に、がん大国になりました。現在では全国民の2人に1人ががんに罹患するといわれております。近年担がん患者に対する運動療法は、Activity of Daily Living(ADL, 日常生活動作)を改善するのみならず予後をも改善することが報告され、がん患者を対象とした運動器治療の重要性について見直されつつあります。私は20年以上にわたり大学病院やがん専門施設にて、骨や軟部組織から発生する腫瘍の治療に従事してきましたが、近年では骨転移診療などがん患者さんへの運動器診療に携わる機会が急増してきました。そしてがん運動器診療の社会的ニーズを背景に、2021年4月1日埼玉県立がんセンターの独立行政法人化と時を同じくして、がんリハビリテーション室長を拝命いたしました。

 当院のがんリハビリテーション室は常勤の理学療法士4名と非常勤の作業療法士1名、言語聴覚士1名で構成されております。500床を超える病院においてリハビリスタッフの数は少数ではありますが、それゆえに集団リハビリテーションや、パンフレットを活用した運動指導をおこなうなど工夫されたがんリハビリテーションを提供しております。当院の研究では消化器がんや頭頚部がん患者さんを中心に栄養療法を併用したがんリハビリテーションを提供することでがん治療の成績が向上することもわかってきました。また当院整形外科では、全国的にみても多くの四肢体幹の骨軟部腫瘍手術をおこなっており、当院療法士は四肢の運動器障害に対するリハビリテーションの経験も豊富であります。今後もがん患者さんの心身をサポートする質の高いリハビリテーションの提供を続けてまいります。

 運動器機能を維持・改善するためには骨と筋肉の両面からのアプローチが効果的であると考えております。特にがん患者さんはホルモン治療、ステロイド治療、抗がん剤治療などの薬物治療や歩行機会の減少などの理由で骨粗鬆症が進行しているケースがあり、大腿骨骨折や脊椎圧迫骨折をきたして歩行障害に陥ることがあります。このような骨折でがん治療が制限されるとがんの増悪に直結するため、がん患者さんにおける骨粗鬆症検査、治療は特に重要であります。当院では五木田整形外科科長、上杉医師らのもと2021年1月に骨粗鬆症外来が開設され、現在辻野医師らよりがん骨粗鬆症診療がおこなわれ、今後もさらに発展していくことが予想されています。

 がんロコモ、骨転移キャンサーボード、骨粗鬆症外来など当院の先進的な取り組みについては以下にも記載しておりますので、ご参照下さい。引き続き立ち止まることなく、がん運動器診療の進歩、発展に寄与してまいる所存です。どうぞご理解、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

がんロコモティブシンドローム対策

1がん治療と整形外科の関わり

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場、それらの有効な使用対象をあらかじめ検査するコンパニオン診断や、がん組織の遺伝子パネル検査など、昨今のがん治療は急速な発展を遂げており、がんは「死ぬ」病気から、「治せる」あるいは「付き合う」病気になりつつあります。当科では、がんを患った患者さまの運動器ケアにも目を向けています。がんを患っても「生涯動ける」ようにサポートすることが、私たち整形外科の使命と考えています。

 

2がん治療と日常生活動作

がん治療を開始・継続するにあたっては、年齢・臓器機能・合併症以外に、日常生活動作の制限の程度を評価する必要があります。例えば、がん治療の要のひとつであるがん薬物療法(抗がん剤)が可能かどうかの判断は、日常生活動作の評価指標であるパフォーマンス・ステータス(Performance status: PSと表現します)によって行います。PSは4段階に分類され、PS 3-4の患者さまにおいては原則として化学療法の適応はありません。これは簡単に言うと、十分歩けない患者さまはがん治療が受けられないということを意味しています。十分ながん治療を受けられるようにするためには、患者さまのPSを維持すること、また低下したPSを改善させることが重要となります。

 

 

 3「がん」とロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム(いわゆるロコモ)とは、中高年以降に多く見られる、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症や骨粗鬆症を3大原因とする運動器障害のことで、整形外科が主体となって診断・治療を行っています。そして、がん自体あるいはがんの治療によって生じる様々な運動器障害の状態を「がんロコモ」とよび、この状態を放置すれば日常生活動作は低下し、がんによる寝たきりリスクが上昇します。

整形画像

「がんロコモ」は具体的に、がんの骨転移による痛みや骨折、脊椎転移による四肢麻痺のほか、抗がん剤の副作用による手足末梢のしびれや動かしにくさ、手術による運動器障害、長期入院治療と安静に伴う体力・筋力の低下や、がんそのものの進行による衰弱等が原因となって引き起こされます。「がんロコモ」の患者さまはPSが低下し、がん治療の非適応や中断につながります。「がんロコモ」に早期に気づき治療介入することにより、PSが維持・改善され、結果としてがん治療が継続可能となり、入院期間の短縮や生命予後改善につながる可能性があります。

がんロコモに対するケアは、緩和的ステージにある患者さまや、脊椎転移による完全麻痺の方も対象とします。がんの終末期でも痛みを出さずに動かせる関節を確認してリハビリを行うことや、下肢麻痺の方でも残存する運動機能を最大限維持することで、身体的・精神的・社会的にも患者さまの生活の質を高めることが可能となります。

 

〇当科における「がんロコモケア」の取り組み

 2018年より、整形外科医、理学療法士、看護師からなる運動器ケアチームを形成し、月2回の定例運動器ケアとして、入院患者様のための「がんロコモ回診」を行っています。がん治療中の骨転移に対する専門的診察・治療のほか、骨転移以外の四肢・関節の痛みについても診療します。また、治療に伴って生じる体力・筋力や移動能力の低下が起きにくいよう、早期のがんロコモ発見と予防的なリハビリ介入に努めています。多職種が連携して、運動器の観点からがんの治療継続と生活の質を高めることを目的とした「がんロコモケア」に取り組んでいます。

〇骨転移キャンサーボード

 当科では、骨転移患者様の診療の質を高めるために、月1回の骨転移患者さまに関する多職種会議である、骨転移キャンサーボードを開催しています。治療を担当する主治医の先生のみでは判断の難しい、骨や関節の健康状態の診断と、日常生活動作がどこまで可能かなどの専門的な判断を行っています。

 

〇がん骨粗鬆症外来

  2021/1/1より、「がん骨粗鬆症外来」を開設しました。ホルモン治療、ステロイド治療、長期入院による運動量低下などは、患者さんの骨密度を低下させることがあります。整形外科専門医が、がん治療を行う患者さまの「骨の健康状態;Bone Health」を調べ、必要な治療を行います。

 

お問い合わせ

地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立がんセンター  

郵便番号362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室780番地 埼玉県立がんセンター

ファックス:048-722-1129

検査や治療又は診療の内容に関する個別のご相談には応じかねます。
がん相談については、地域連携・相談支援センターをご利用ください。
地域連携・相談支援センター連絡先
電話:048-722-1111
受付時間 平日9時00分~16時00分

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