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掲載日:2026年1月9日
| 頭頸部がんに対する放射線治療 | 子宮がんに対する放射線治療 |
| 前立腺がんに対する放射線治療 | 血液腫瘍に対する放射線治療 |
| 乳がんに対する放射線治療 | 脳腫瘍に対する放射線治療 |
| 肺がんに対する放射線治療 | 皮膚腫瘍に対する放射線治療 |
| 食道がんに対する放射線治療 |
頭頸部がんは、口腔、咽頭(上咽頭・中咽頭・下咽頭)、喉頭、鼻副鼻腔、唾液腺など多岐にわたる部位に発生します。これらの領域は、発声、嚥下、味覚、唾液分泌といった生活の質に直結する機能が密集しており、治療選択においては「根治性」と「機能温存」の両立が重要となります。
当院では、早期声門癌など一部の例外を除き、原則としてIMRT(強度変調放射線治療)を用いて治療を行っています。IMRTは、腫瘍に十分な線量を投与しながら、唾液腺、嚥下関連筋、脊髄などの重要臓器への線量を低減できるため、治療後の有害事象軽減に大きく寄与します。
頭頸部がんの多くは扁平上皮癌であり、放射線感受性が比較的高いことが特徴です。早期癌では放射線治療単独で根治が期待でき、進行癌では抗がん剤との同時併用化学放射線治療が標準治療となります。また、手術後に再発リスクが高い場合には、術後補助放射線治療を行い、局所再発の抑制を図ります。
代表的な線量は、早期声門癌で総線量60~64.8Gy(1回2.4Gy、25-27回)、多くの進行頭頸部がんで70Gy(1回2Gy、35回)、術後照射では60~66Gy(30~33回)です。
有害事象として、急性期には口腔・咽頭粘膜炎、皮膚炎、嚥下時痛、味覚低下、体重減少などがみられます。治療後数週で改善することが多いものの、治療中は栄養管理や疼痛管理が重要です。晩期有害事象としては、唾液腺障害による口腔乾燥、味覚障害、嚥下障害、誤嚥、顎骨壊死などが起こる可能性があります。当院では、IMRTによる線量最適化に加え、治療前の歯科評価、治療後の長期フォローアップを行い、有害事象の軽減と早期対応に努めています。
術後照射は、放射線治療では治る可能性が低い進行頭頸部癌に手術を行い、手術後の病理診断で再発リスクが高かった場合に再発リスクを下げるための必須な治療です。有害事象は放射線治療単独よりも術後照射でより強く起こるため、手術でも放射線治療でも同等の成績である早期がんについては、術後照射が必要そうな場合には初めから放射線治療を行う方が良いかもしれません。
前立腺がんは高齢男性に多く、進行が比較的緩やかな場合が多い一方で、長期予後を見据えた治療選択が求められます。放射線治療は手術と並ぶ根治的治療法であり、患者さんの年齢、併存疾患、リスク分類を踏まえて適応を判断します。
当院では、外部照射による放射線治療と、低リスク症例に対するI-125シードを用いた小線源永久挿入術を行っています。小線源と外部照射の併用は行っていません。外部照射ではIMRTを用い、前立腺と直腸の間にスペーサ―を留置することで前立腺周囲の膀胱・直腸への線量を低減し、有害事象の抑制を図っています。
一般的な線量は、低~中リスク症例で60Gy/20回の寡分割照射、高リスク症例や術後照射、再発治療では70Gy/35回が用いられます。小線源永久挿入術では前立腺全体に160Gyを投与します。部分的に小線源を挿入するフォーカルセラピーも対象の患者さんに施行しています。
急性期有害事象として、頻尿、排尿時違和感、残尿感、軽度の直腸症状がみられることがあります。多くは治療終了後1-3か月で改善します。晩期有害事象として、排尿障害、直腸出血、勃起機能障害が起こる可能性がありますが、IMRTの導入により重度有害事象の頻度は低下しています。
乳がんの放射線治療は、乳房温存術後または乳房切除後の再発予防を目的として行われます。温存術後に放射線治療を追加することで、局所再発率が大きく低下することが多くの研究で示されています。
一般的な線量は、温存術後、乳房切除後(胸壁+鎖骨上)で42.56Gy/16回、必要に応じて腫瘍床へのブースト照射10.34/4回Gyを追加します。鎖骨上や内胸リンパ節などを含める場合にはIMRTを用い、照射線量の安定と心臓や肺への線量低減を図ります。
急性期有害事象としては、照射部位の皮膚炎、軽度の倦怠感がみられます。晩期有害事象として、皮膚硬化、色素沈着、まれにリンパ浮腫(主に手術の影響とされている)、心肺障害が報告されています。治療計画段階で臓器線量を厳密に管理し、有害事象を最小限に抑えます。
肺がんでは、手術不能例や手術を希望されない患者さんに対し、放射線治療が重要な役割を果たします。局所進行非小細胞肺がんでは、化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線治療が標準です。
代表的な線量は、化学放射線治療で60Gy/30回、早期肺がんに対する定位照射では52Gy/4回が基本ですが、中心に近い場合には60Gy/8回など分割回数を増やします。
急性期有害事象はあまりありません。晩期有害事象として、放射線肺炎や肺線維症が問題となる場合があります。当科では、正常肺線量を抑える治療計画を徹底し、安全性を重視しています。
食道がんは、嚥下障害や体重減少をきたしやすく、診断時には進行していることも少なくありません。治療選択としては、手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療が重要となります。放射線治療は、手術が困難な患者さんや手術を希望されない患者さんに対する根治的治療として、また手術後再発や症状緩和を目的とした治療として重要な役割を担っています。
根治を目的とした場合、化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線治療が標準的に行われます。これは、放射線による局所制御効果と、抗がん剤による全身制御効果を同時に得ることを目的としています。特に扁平上皮癌では放射線感受性が高く、手術と同等の治療成績が得られる場合もあります。
一般的な照射線量は、根治的化学放射線治療として50.4~60Gy/28~30回が用いられます。再発病変や限局病変に対しては、線量や照射範囲を調整して治療を行います。治療計画では、肺、心臓、脊髄などの重要臓器への線量を慎重に評価し、可能な限り有害事象を抑える工夫を行います。
急性期有害事象として最も頻度が高いのは放射線性食道炎であり、嚥下時痛、胸部不快感、食事摂取量の低下がみられます。また、皮膚炎、倦怠感、食欲不振なども起こり得ます。治療中は栄養状態の悪化を防ぐため、栄養指導や支持療法を積極的に行います。
晩期有害事象としては、食道狭窄、瘻孔形成、肺障害、心機能障害などが挙げられます。頻度は高くありませんが、重篤化する可能性があるため、長期的な経過観察が重要です。当科では、IMRTなどの高精度治療を用いて線量分布を最適化し、有害事象の発生リスク低減に努めています。
子宮がんには主に子宮頸がんと子宮体がんが含まれます。放射線治療は、特に子宮頸がんにおいて重要な役割を果たしており、進行期では化学放射線治療が標準治療となります。子宮体がんでも、術後再発リスクが高い場合や再発症例に対して放射線治療が行われます。
子宮頸がんIIB期以上の扁平上皮癌では、抗がん剤と放射線治療を同時に行う化学放射線治療が第一選択です。治療は、骨盤全体への外部照射と、腫瘍近傍から高線量を投与する腔内照射を組み合わせて行います。腔内照射は治療成績向上に不可欠な要素であり、外部照射のみでは十分な治療効果が得られません。また、大きな腫瘍に対しては腔内照射では十分に照射できない場合があります。その場合には数本の針を追加することで劇的に線量分布が改善するハイブリッド腔内照射という技術があります。群馬大学放射線科から開発された技術で、当院でも必要に応じて行っています。一般的な線量は、外部照射として45~50Gy/25回、リンパ節転移がある場合には追加照射を行います。腔内照射では24Gy前後を4回程度に分けて投与します。治療計画は画像を用いて行い、膀胱や直腸への線量を慎重に管理します。
急性期有害事象としては、下痢、排尿時違和感、膀胱刺激症状、皮膚炎、倦怠感などがみられます。腔内照射時には器具留置による違和感がありますが、照射そのものによる痛みはほとんどありません。
晩期有害事象として、直腸出血、膀胱障害、腟の狭窄や乾燥、性交時痛などが生じる可能性があります。これらは生活の質に影響するため、治療前から十分な説明を行い、治療後も長期的なフォローアップを行います。
血液腫瘍には、悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫などが含まれます。放射線治療は、これらの疾患において補助的、あるいは根治的治療として用いられます。特に悪性リンパ腫では、化学療法と放射線治療を組み合わせることで治療成績が向上することが知られています。
限局期の悪性リンパ腫では、化学療法後に病変部へ放射線治療を追加することが標準的です。MALTリンパ腫など一部の低悪性度リンパ腫では、局所に限局していれば放射線治療単独で根治が期待できます。
一般的な照射線量は、リンパ腫で24~40Gy/12~20回が用いられます。多発性骨髄腫や骨病変に対しては、疼痛緩和を目的とした低線量照射が行われます。
造血幹細胞移植前処置として行われる全身照射(TBI)は、免疫抑制および腫瘍細胞の除去を目的とします。代表的な線量は12Gy/6回、または4Gy/2回で、1日2回に分けて照射します。
急性期有害事象としては、倦怠感、吐き気、皮膚炎、骨髄抑制などがみられます。晩期有害事象として、内分泌障害、白内障、二次がんなどが問題となる場合があります。これらを踏まえ、適応は慎重に判断されます。
脳腫瘍には、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍があります。放射線治療は、手術後の再発予防、手術不能例への根治的治療、あるいは症状緩和を目的として行われます。
多く行っているのは、転移性脳腫瘍に対する定位照射です。以前は複数の転移には脳全体に照射(全脳照射)していましたが、近年は病巣が20個でもピンポイントで照射したほうが良いということがわかってきました。2023年から導入したシステムにより、病変が何個でも同時にピンポイント治療をすることが可能になりました。以前は個数が多い場合はガンマナイフ施設に紹介していましたが、現在は当院でほぼ全て対応可能です。脳神経外科が窓口になっておりますので御相談下さい。造影MRIを撮影した当日に計画CTを行い、2日後から照射を始めるスケジュールとしております。
原発性脳腫瘍では、腫瘍の種類や悪性度に応じて照射範囲や線量を決定します。代表的な線量は40~60Gy/15~30回です。転移性脳腫瘍では、病変数や大きさに応じて全脳照射または定位放射線治療を選択します。主な線量は全脳照射では30Gy/10回、定位照射では20Gy/1回または30-35Gy/3~5回です。
急性期有害事象として、脱毛(全脳照射:全体、定位照射:部分的)、倦怠感、頭痛、脳浮腫による症状増悪がみられることがあります。多くは一過性で、薬物治療により改善します。
晩期有害事象としては、記憶力や注意力の低下などの認知機能障害(軽度かつまれ)、放射線壊死(定位照射後の数%)、内分泌障害(まれ)などが挙げられます。
※認知機能障害を考慮して記憶に関連する海馬の線量を下げるという方法もありますが、下げた部位からの再発リスクがあること、海馬の線量を下げたことによるメリットがまだ明らかでないことから、全例には行っておりませんが対応は可能です。
皮膚の腫瘍は主に切除が行われますが、放射線が良くきくものもあります。基底細胞がん、有棘細胞がんといった腫瘍は60Gy/30回で治療します。鼻や、目の近くなど、切除した場合の影響が大きい部位の腫瘍に対してよく用いられます。また、外陰部パジェット病や、ボーエン病などが陰部にできた場合、手術は大がかりなものになりますが、放射線は皮膚の発赤は残るものの30回程度の照射で制御可能です。
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