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掲載日:2024年1月18日
埼玉県立がんセンターでは、乳腺外科・形成外科が協力して乳房再建の手術を行っています。乳癌手術を受けられた患者さんが、失われた乳房をとりもどすことで、治療後の生活の質(Quality of life)の向上につながることを目的としています。当院では乳腺外科と形成外科との連携が良好であり、乳癌の治療に配慮した再建術の計画が可能です。
乳房再建術の対象となるのは、乳房切除を受ける方および過去に受けた方です。乳房切除を受けてから時間がたっていても再建術を行うことは可能です。
当院での過去5年の乳房再建術の手術件数と術式の内訳は下図の通りです。2013年にシリコンインプラントが保険適応となり手術件数が増加しましたが、2019年に一時的に一部のインプラントが使用できなくなったため(後述)、自分の組織での再建が増加しました。また、当院で行っている手術は基本的に健康保険の対象です。
乳房再建術には、自分の組織を移植する方法と、人工物を用いる方法があります。
自分の組織を用いる方法には、おなかの組織の移植、太ももの組織の移植、背中の組織の移植の3通りの方法を行っています。
それぞれの方法を以下に詳しくご説明します。
・おなかの組織の移植(遊離下腹部皮弁法)
遊離下腹部皮弁法は、おなかの組織を移動させて乳房の形を作る方法です。
腹部の皮膚・皮下脂肪を、血管をつけたまま採取し、胸部で血管をつないで移植した組織の血の巡りを回復させます。
・太ももの組織の移植(遊離大腿皮弁法)
遊離大腿皮弁法は、太ももの組織を移動させて乳房の形を作る方法です。
太ももの皮膚・皮下脂肪を、血管をつけたまま採取し、胸部で血管をつなぎます。
せなかの組織の移植(有茎広背筋皮弁法)
広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)は、背中の組織を移動させて乳房の形を作る方法です。
広背筋という背中の筋肉とともに腰部の脂肪を移動します。血管吻合を行わずに組織を移動する方法です。
・人工物による再建
シリコンでできた人工乳房を使う方法です。
1回目の手術では組織拡張器(エキスパンダー)という水風船のようなものを入れ、外来で徐々に皮膚を伸ばします。十分に皮膚が伸びた所で、シリコンでできた人工乳房に入れ替える手術をします(2回の手術が必要です)。
【インプラントの使用制限および現状について】
2013年より乳癌術後の再建に用いるシリコンインプラントが保険適応となりました。
インプラントの種類は以下のようなものがあります。
・表面の構造の違い
ザラザラ:テクスチャードタイプ ①
ツルツル:スムーズタイプ ②
・形状の違い
乳腺の形状を模した:アナトミカルタイプ ③
丸形:ラウンドタイプ ④
このうち多く使用されていたのが、テクスチャード・アナトミカルタイプです。
ザラザラによる癒着により回転が防止され、さらに術後の硬化(被膜拘縮)が少ない利点があったためです。しかし、表面のザラザラが悪性リンパ腫の原因となりうるということから、2019年に同タイプは一旦使用不可となりました。
その後、再度ザラザラの溝が浅いものが使用可能となっており、現在はテクスチャードタイプ・スムーズタイプの両方が使用できます。しかしながら、現在使用可能となったテクスチャードタイプのインプラントにおいても、極まれですが悪性リンパ腫の発症は報告されています。保険採用されているインプラントに関する詳細な情報に関しては日本オンコプラスティックサージャリー学会のホームページ(http://jopbs.umin.jp/)をご参照ください。
・自分の組織の移植と人工物による再建の比較
・自分の組織の手術法の比較
・乳輪乳頭再建
乳輪乳頭再建は、乳房再建後半年~1年後におこないます。
乳癌の治療は個別化が進み、治療の内容はそれぞれの患者さんで異なります。当院では、乳癌の治療内容を考慮したうえで、患者さんのご希望を踏まえて治療方針を決定しています。
また、ほかの病院で乳癌手術を受けた方の再建術のご相談もお受けします。その際は、主治医と相談の上、紹介状を作成していただき、形成外科の乳房再建外来をご予約下さい。
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