埼玉県立がんセンター > 臨床腫瘍研究所 > 研究所プロジェクト紹介 > 緑茶カテキンによるがん予防、および転移抑制機構の物理学的・分子生物学的解析
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掲載日:2023年9月12日
担当: 菅沼雅美、ウォンシリシン パタマ、菅野美樹、並木梢、横山翔大
緑茶の多量飲用ががんを予防することは、動物実験だけでなく、臨床介入試験でも証明され、世界で広く認められています。これまでの研究から、1)緑茶カテキンが、多様な臓器のがんにおいてがん幹細胞性を抑制すること。2)EGCGあるいは緑茶エキスが、併用によって抗がん剤の効果を増強すること等が明らかになっています。私共は、原子間力顕微鏡を用いた生物物理学的な研究から、緑茶カテキンががん細胞の膜を硬化し、その結果、受容体チロシンキナーゼであるEGFRやAXL等の活性化を抑制することを見出しました。この細胞膜硬化作用が、緑茶カテキンのミラクルな薬効をもたらしていると考えています。最近、緑茶カテキンの処理が、EGFやIFN-γによって誘導される免疫チェックポイント分子PD-L1の発現が抑制し、細胞障害性T細胞(CTL)の活性を回復させることを見出しました。すなわち、緑茶カテキンは免疫チェックポイントによって抑制されたCTLの活性を回復して抗腫瘍免疫を活性化することが分かってきました。多様な抗がん効果を持つ緑茶カテキンを活用し、革新的ながん治療へと発展させたいと考えています。
緑茶カテキンの構造式とその作用機構の図
緑茶カテキンの主成分EGCGはがんの細胞膜を硬化させ、EGFRやAXL等様々なレセプターの活性化を抑制して、多様な抗がん効果(増殖や運動能の抑制、がん幹細胞性の抑制、PD-L1の発現抑制による抗腫瘍免疫の活性化)によって、がん予防・治療効果をもたらします。
代表する論文成果
1. Iida K, Suganuma M et al. Cell softening in malignant progression of human lung cancer cells by activation of receptor tyrosine kinase AXL. Sci. Rep., 7:17770. doi: 10.1038/s41598-017-18120-4, 2017
2. Suganuma M et al. Green tea catechin is alternative immune checkpoint inhibitor that inhibits PD-L1 expression and lung tumor growth. Molecules, 23(8). pii: E2071. doi: 10.3390/molecules23082071.
3. 緑茶カテキン 免疫細胞後押し 平成30年10月5日 朝日新聞埼玉版に掲載
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